『浮世艶草子』第6巻
篁千夏(脚) 八月薫(画) リイド社 \552+税
(2014年8月27日発売)
バラエティ豊かなシチュエーションでのエロスを、ユーモアを交えて描く『My Pure Lady お願いサプリマン』(全身タイツの「ゆるキャラ」姿に扮した男女の絡みを描いた回は、もはや伝説級!)や、「体験談もの」マンガで人気の八月薫と、謎の原作者・篁千夏のタッグよる大江戸エロスのオムニバス作品集、待望の最新巻だ。
今回も期待に違わぬ秀作ぞろい。
とりわけ某「じぇじぇじぇ」な連続テレビ小説からインスパイアされたのだろう「海女(あま)」の美少女がヒロインを務めるエピソードと、「江戸しぐさ」のでたらめっぷりを小粋にからかった「吉原しぐさ」のエピソードが強い印象を残す。
題材のユニークさによりかからず、江戸時代に関する薀蓄をしっかりと盛り込みながら、様式美に満ちた物語を構築している。とても誠実な作りだといえよう。
八月の描く品のある美男・美女の姿は、昨今の「萌え」作品と連なる魅力を宿しつつ、どこか池上遼一作品のそれを彷彿とさせる。ゆえに時代ものというジャンルは、まさに適材適所。
華麗な筆致で描かれる江戸の風俗に魅了され、艶やかな濡れ場に盛り上がるうち、知らず知らずのうちに江戸時代に関する知識も増えていく。
大人のための「おもしろくって、ためになる」マンガとして、もっと、もっと知名度が上がっていい。
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei