話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『雪ノ女』
『雪ノ女』著者の相澤亮先生から、コメントをいただきました!
『このマンガがすごい! comics 雪ノ女』
相澤亮 宝島社 ¥800+税
(2015年12月10日発売)
「わたしに殺されたい?」という帯コピーと、こちらを見上げる情念あふれる女の横顔に、なんだかな~……と躊躇している人がいたら、「そういうんじゃないから!」と教えてあげたい。
現在「このマンガがすごい!WEB」で試し読みマンガを掲載しているので、まずは自分の目で見てみてほしい。
雪山で遭難した酒井の前に現れた「雪女」。同僚の命を奪った彼女は彼を見て「さびしそうな顔……」とつぶやき、もし今夜のことを誰かに話したら酒井を殺すと言って彼を見逃し、立ち去った……。
昔話としてもおなじみ、小泉八雲の「雪女」をベースに、現代に生きる男女の出会いと別れを、その子どもらに至るストーリーとして描き出した本作。
水墨画のようにモノクロームの濃淡で描き出される、夜の闇の深さや雪の白さ。しんと張りつめたような静寂、なめらかな肌の感触やあたたかな体温までもが伝わってくる、幻想的な世界観の描写に、まず引きこまれる。
人と関わることが苦手でなんの生き甲斐もなく、ただ淡々と生きていた自衛官の酒井と、人里離れた山のなかでひっそりと暮らしていた、ゆき。
孤独なふたつの魂が出会い、冷えた心と体を抱き合い、初めてこの世界で生きてゆく意味を発見するシーン。その抑制された描写の生々しさ、静かな高まりにぐっとくる。