365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
1月3日はアップル社の創業日。本日読むべきマンガは……。
『美味しんぼ』第59巻
雁屋哲(作) 花咲アキラ(画) 小学館 ¥485+税
1977年1月3日、スティーブ・ジョブス、スティーブ・ウォズニアック、マイク・マークラの3人によって、のちに、Macintosh OSやiPhoneで一世を風靡することとなるアップルコンピュータ(現・アップル インコーポレイテッド)社が設立された。
そんなアップル社製品が現在まで愛される最大の魅力は、筐体やユーザーインターフェイスがシンプルで美しいこと。
設立の前年にジョブスらが開発したApple Iや、初期のものこそ無骨だが、徐々に先鋭化されていったデザイン面の評価は非常に高く、熱狂的にMacPCやアップル製品のデザインを愛し、お布施をしていく「アップル信者」と呼ばれる人々は現在も多く存在している。
そして、そんなMacの最大のライバルは、デザイン性は二の次で、オフィス向けソフトの対応など、業務における利便性を追求してきた、マイクロソフト社のWindows OS、およびそれを搭載したPCたちだ。
今回は、そんなMacとWindowsの戦いを描いた、『美味しんぼ』第59巻の1エピソード「マルチメディアと食文化」を紹介したい。
新聞記者の山岡士郎が、エピソードごとに登場する様々なトラブルを料理を解決する様子や、士郎が提示する「究極のメニュー」と、美食家である士郎の父・海原雄山による「至高のメニュー」の料理対決があまりにも有名な本作。
今回紹介するエピソードでは、士郎の所属する東西新聞社が、ホームページに「究極のメニュー」についてのページを掲載したいと提案するところから物語が始まる。
士郎がインターネットの利便性を理解していることもあり、話は円滑に進むかと思われたが、東西新聞社のホームページ制作を担当している社員・藤村が、「体が健康で腹がへってりゃなんでもうまいんだ」と言うほど、食にこだわりのない人物であることが判明。
それにカチンと来た山岡は、例によっておとなげなく噛みつくのだが、その先が問題。
こともあろうに「PC互換機でWindowsを走らせて喜んでるから、おマヌケなのも当たり前」と罵倒するのだ。理不尽!
そこから延々と、Windowsに対する文句を言いまくったことで、藤村は激怒。
山岡に協力するのを拒んでしまう。
その後、山岡は藤村とともにハイキングに出かけ、おにぎりと水の極端においしいものとまずいものを交互に食べてもらうことで食の大切さに理解を持ってもらい、藤村はバリバリのMacユーザーであったことが明らかに(バカにされたWindows機は、前の担当者のものだった)なったことで、藤村と山岡は完全に和解。一件落着となるのだった……。
Windowsを完全否定するためだけに作られたようなこの回の掲載当時(90年代半ば)は、Win VS Macの戦いが本格的に始まっていた時代のエピソードということもあり、ネットでOS論争が巻き起こるとき、Mac信者を象徴する存在としてこの回が話題に挙げられることもしばしば。
とはいえ、当時といえどこんな常軌を逸したキレ方をするMac信者は、さすがに士郎くらいしかいなかった……はずである。
<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
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