話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『宇宙を駆けるよだか』
『宇宙を駆けるよだか』著者の川端志季先生から、コメントをいただきました!
『宇宙(そら)を駆けるよだか』第3巻
川端志季 集英社 ¥400+税
(2015年12月25日発売)
「よだかは、実にみにくい鳥です。」(宮沢賢治『よだかの星』)。
完結したばかりの少女マンガ『宇宙を駆けるよだか』のタイトルは、宮沢賢治の有名な短篇を思い出させる。
物語の主人公はかわいくて素直なあゆみ。ある日クラスメイトの海根さんの自殺を目撃したことをきっかけに、2人の体は入れかわってしまう。
影のヒロイン・海根さんはまさによだかのよう。
みにくくて周りから疎まれており、かわいいあゆみの体に入った彼女は、「どっからどう見ても やっぱり私ってブスだわー せっかく入れ替われたんだし 今日から私が小日向あゆみとして生きるね」と宣言。ブスなうえに性格も悪い!? 予想外の反応から、あゆみの「海根然子(うみね・ぜんこ)」としての奇妙な日々が始まる。
完璧な女の子とダークな女の子。ちょっと共感しづらい2人が入れかわったことで、本作は少女マンガのルールを絶妙なさじ加減ではずしていく一種のミステリとなった。
幼なじみの彼氏・シロちゃんの態度は冷たいし、友だちの火賀(かが)が誰よりも早く入れかわりに気がつく。
心の底に隠した本音や町に伝わる「赤月」の呪術、よじれる恋模様。最終回まで先の読めない展開がスリリングだ。