365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
1月23日は能條純一の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『講談社漫画文庫 翔丸』上巻
能條純一 講談社 ¥650+税
1月22日は漫画家・能條純一の誕生日。
非常にクールなタッチ、そして強烈かつ大胆なキャラクターを描くことが最大の特徴で、代表作としては麻雀マンガに革命を起こしたとも言える衝撃作『哭きの竜』や、超絶に個性的な棋士たちがしのぎを削りあう『月下の棋士』などが挙げられるだろう。
現在も、フリーカメラマンがとある事情から仏教への道を歩み始める『月をさすゆび』(原作:永福一成)を連載中。
近年は、いわゆるヒューマンドラマ的なジャンルの作品が増えてはいるが、そのなかでも独特のセリフまわしは健在。そう、能條純一作品の魅力といえば、何よりも「尖ったキャラ」でしょう。
勝負師はもちろんのこと、医師や弁護士からラーメン職人まで、能條純一ワールドの登場人物たちは「常人には理解の及ばない領域で何かを極める」ことが多いのが特徴。いわゆる“カリスマ”たちの一挙一動に、読者としては「なんだかわからないけど、この人すごい!」と心酔しちゃうのです。
そんな能條純一ワールドの魅力がさらに端的に凝縮されているんじゃあないかとオススメしたいのが『翔丸』。
主人公はなんらかの職業人というわけではなく高校生、しかもカッターナイフ一本で次々に人心を掌握し、ついには国家をも支配する……という、おおよそ能條純一以外には描けないであろう作品である。
とんでもない大事件が淡々と、多くは回顧録からの引用や第三者の証言の形式で語られるスタイルで、「それより1時間後 正確にいえば五十八分二十四秒後」といった“能條節”も炸裂しまくっている。
正直、この『翔丸』のジャンル自体がなんなのかすらよくわからないのだが、このあとにも『ゴッドハンド』や『奇跡の少年』といった、テイストとしては近い作品を描いていることからして、もはやこれは「能條純一」というジャンルと言ってもいいのではないだろうか……とすら思えるしだい。
これからもエッジの効いたキャラとセリフで、我々のような凡人をシビれさせ続けていただきたく思います。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。