日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『少女終末旅行』
『少女終末旅行』第3巻
つくみず 新潮社 ¥580+税
(2016年2月9日発売)
果てがあるのかないのか、わからないほど広がる鉄骨の廃墟。
ちょっぴり神経質でまじめなチトと、元気で直感型のユーリは目的もなく、悲観することもなく、愛車テッケンクラートに乗ってただただ多層構造の廃墟を旅している。
この多層構造の巨大な廃墟にもかつては様々な施設が稼働していたようだ。
地下の都市基盤殻層、旧発電所、かつて戦争があったことをにおわせる残骸。
このたび2人の少女がやってきたのは、固形食料(レーション)生産施設。
飛行機をつくってこの都市の外へ行こうとしたイシイに教えてもらった場所だ。
チトとユーリは偶然にも芋粉、砂糖と塩を発見し固形食料をつくることに。
焼きたての固形食料に幸せを感じる2人の表情はそこが廃墟だと感じさせない。
再び歩みを進めて、墓地。
誰からも忘れられないための墓だが、もしも世界からだれもいなくなったら?
そんなことを考えながら、また移動。次にやってきたのは102の水槽がある大がかりな施設。
たった1匹だけの魚と自律型機械がそこにはいた。
意思疎通のできる自立型機械と出会ったことで、チトとユーリは生命についてある答えを導き出す。
本作に収録されている「22 技術」「23 水槽」「24 生命」は、この旅の先に何があるかを読者に感じさせる重要なエピソードだ。
作品全体に漂う寂しさやせつなさと、2人の能天気さ。
どこか終わりに向かう絶望感の色がちらりとか垣間見えるが、この絶望にはまったくもって悲壮感がない。
その理由はこの3つのエピソードに凝縮されている。
寝て起きて食べて移動して、また寝て。
未来には世界の終わりが待っているかもしれないけれど、その日をゆるやかに生きる2人に受容する強さを感じた。
共感と受容は、絶望と相反することなく心に抱き続けることができる。
<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
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