『少女終末旅行』第1巻
つくみず 新潮社 \580+税
(2014年11月8日発売)
立ち並ぶ無数の廃墟と、銃火器。雪が静かに降り積もる。
ケッテンクラート(履帯式オートバイ)に乗って進んでいく世界に、生物はいない。2人の少女は終末の世界を行く。
主人公の少女・チトとユーリは、屈託のない子たち。ぼんやりとした顔で旅を続けている。
そこかしこに転がっているのは戦車や銃弾。人工建造物のなれのはてだけが、目の前に連綿と続いている。
この作品の世界は完全に、何かが終わってしまった後の世界だ。命がない世界に、時間は存在しない。
生き残っていたのは序盤では女の子2人だけ。彼女たちは雪が降るなか、防寒着を着て移動し続ける。
過去に何があったのか、いっさい語らない(まあ2人だから語る必要もないし)。
日本語が読めないのに、変形日本語を書く彼女たち。いったいここがどこで彼女らが何人なのかも定かでない。
2人の少女の珍道中は、理由も目的もない。ただ食べるものを探して彷徨う。放浪した先に何があるかなんて、まったくわからない。
時間だけはムダにあり、とりあえず進む、という彼女たちの旅。妙に充実して見える。
時間の止まった世界で自我を保つのは大変で、途中出てくる別のキャラが精神的にやられてしまうのもよくわかる。
彼女たちはタフなものだ。巨大な管を拾ってきて、工業用水の熱湯でお風呂に入るシーンなど、楽しそうでしかたない。
この世界に何が起きたかの謎明かしは気になる。しかし今はそれより、2人の目を通して見た「終わりの景色」を楽しみたい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」