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今回紹介するのは、『がっこうぐらし!アンソロジーコミック 壊』
『がっこうぐらし!アンソロジーコミック 壊』
黒田bb、牛木義隆、津留崎優、kashmir、つくみず、
恩田澄子、ムラ黒江、里好ほか 芳文社 ¥590+税
(2015年9月12日発売)
TVアニメの放送が終了した『がっこうぐらし!』。
原作コミックとアニメ版の大筋は同じ。しかし作品の作りに大きな違いがあった。
アニメ版では、苦難にあいながらも青春を楽しもう、がんばって生きていこう、という明るさがあった。
原作コミックには、そんな余裕はほとんどない。気が狂いそうなギリギリの生活、気を抜けば疲れた顔で絶望の淵に追いやられてしまう日々。
それをヒロインのゆき(真っ先に狂ってしまった)の笑顔に寄りかかりながら、かろうじてふんばって生存している。それすらも6巻になると、崩れてしまう。
アニメでみんなの心の救いだった犬の太郎丸は、原作ではちょい役で、むしろ絶望に拍車をかけるキャラだった。
このアンソロジーは、コミック版準拠。
グロテスクな要素よりも、精神的に追いつめられている状況や、世界が崩壊する虚無感を描いた作品が多い。
ムラ黒江は、みーくんがゾンビ(とは原作の作中で明言されていませんが、便宜上そう表記します)を見ながら、じつはこの世界は平和なのではないか、ゾンビになったほうが、幸せなんじゃないかと戸惑う様子を描く。
里好が描くのは、元々同じ学校の生徒だったゾンビの残骸を、淡々と片づけるくるみちゃんの姿。彼女は、ゾンビの残骸を引きずりながら、語りかける。
「あたしがこうなったら やっぱ学校来たかな」
「憧れてた人がいたんだ 会いに来ちゃうだろうな…」
「来るよな… 未練持ったままってつらいもんな」
「なああんたもいたのか?」
つくみずのマンガに広がるのは、車で移動する4人が見た、終末世界。高速道路も公道も、朽ち果てた車だらけ。
学校にいるときには見ないふりできたものも、外に出て地獄じみた光景を目の当たりにすると、何も言えなくなってしまう。著者が「くらげバンチ」で連載中の『少女終末旅行』の世界観に至る、一歩手前のような作品だ。
追いつめられた世界に、ぎりぎりの救いを求める作品が多いアンソロジー。
いっぽうで、島崎無印の作品のように、いっけん幸せそうだがよく読むと全然救われていないものもある。
価値観が簡単に壊れる世界で、綱渡りする少女の姿は、魅力的なモチーフだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」