日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『たそがれたかこ』
『たそがれたかこ』第7巻
入江喜和 講談社 ¥580+税
(2016年4月13日発売)
45歳にして第2の思春期を迎えた片岡たかこの物語は、初恋やり直し編に突入。
たかこの毎日にあざやかな色彩をもたらした、ロックバンド“ナスティインコ”のボーカル・谷在家光一(やざいけ・こういち)。たかこはナスティ仲間の中学生、植松碧海=オーミと2人で、「谷在家」というステージネームの由来となった谷在家公園まで出かけることになった。
なんの変哲もない公園で無邪気にはしゃぐオーミの姿を見て、彼に恋愛感情を抱いている自分に気づいてしまうたかこ。
息子のようなオーミに気持ちを伝えることはありえないが、少女時代には経験できなかった10代男子とのデートが実現したことによろこびを覚え、「一生の思い出になりました」とひとりごちる。
いっしょに電車に乗って風景をながめる。だだっ広いだけの公園で笑いあう。ファミレスに入ってパスタとコーラを頼み、向かい合って他愛もない話をする。そんなごく普通のことがキラキラと輝き、大切な宝物になる。
それでも現実の「好き」は、また違う話であり、考えるとミジメな気持ちにもなり……。あぁ、せつない。本当にせつないよなぁ。
一方、拒食症で不登校を続けるひとり娘の一花は、回復のきざしを見せたものの、まだまだ心身ともに不安定な状態。残り少ない中学生活を無事に終えることができるのかは微妙な情勢だ。
だからして「中学生の男の子に熱を上げているヒマなどない」とわかっているはずなのに、オーミと話す時には少女に戻ってしまうたかこ。
この恋の着地点は、まったく見えないけれど、小悪魔女子の“まきっぺ”とよろしくやっている初老の星・美馬修平の言葉を借りれば「そんな思いができたんだからサイコーじゃん」。
なにげないメールのやりとり(ガラケー同士)にドキドキしたり、うっかり淫夢まで見ちゃったり!
年齢なんて関係ない。たかこの青春は、これからが本番だ。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てライター。公開中の映画『アイ アム ア ヒーロー』の劇場用プログラムに参加しております。原作と同じくらいおもしろいので観てね!