日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ローカルワンダーランド』
『ローカルワンダーランド』第2巻
福島聡 KADOKAWA ¥620+税
(2016年4月15日発売)
重厚な近未来SF『機動旅団八福神』、ロボットと少女の心温まる日々を描いたコメディ『星屑ニーナ』で知られる福島聡が短編の名手でもあるのは、ファンにとっては言わずもがなの常識である。本作は短編集なので、2巻から読んでも問題なし!
筆者の一番のお気に入り、「ストレート・アヘッド」の筋をざっと紹介してみよう。
時は1987年。アニメファンがまだ今ほどの市民権を得ていなかった時代。男子高校生の山口は、自分の持っていたアニメ雑誌に興味を示した同級生の宇部を家に招く。
アニメについての素養がない宇部に『風の谷のナウシカ』や『うる星やつら』の劇場版映画などを見せるのだが。
宇部は言われるままに見てはいるが、山口が望んだように作品世界についてどっぷり語れる相手にはなりそうもない。
しかし、ある日、宇部はアニメを模したパラパラマンガを描いて持ってくる。そしてアニメーターになりたいと口にするのだ。予想の斜め上をいくリアクションに、山口はモヤモヤして……。
こうした小さな日常の物語も、ちょっとSF的な物語もひとつの“ローカル”であり、そのなかにある“ワンダー”を描き出す手腕に引きこまれる。
たとえ同じ世界を見ていても感じ方は人によって異なり、日によっても変わるはず。
そんな心の機微をストーリーに昇華させた作品群は、読み手の“世界を見る目”を柔軟にさせてくれるように思う。
雲ひとつない晴天に心浮き立つ日もあれば、そのまぶしさがうっとうしい日もある。曇天が重苦しく感じる日もあれば、妙に心安らぐ日もあるのだと……。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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