人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、鳥飼茜先生!
『このマンガがすごい!2016』オンナ編にランクインした『地獄のガールフレンド』。この作品のみならず、『おんなのいえ』『先生の白い嘘』など、数々の話題作を連発する鳥飼茜先生に、今回、直撃インタビューさせていただきました!
自分をもてあましたアラサー3人娘がひとつ屋根の下で本音をさらけ出し、読んでいると思わず「あるある~」と共感してしまう。鳥飼先生がこの作品をつくるきっかけとはなんだったのか、この作品にこめたテーマは何か? そこには女性漫画家だからこその気づきや想いがあった!
他人は理解できないからこそおもしろい
——「このマンガがすごい!」オンナ編16位ランクインおめでとうございます。
鳥飼 絶妙な順位をありがとうございます!
——1年半ほど前にインタビューさせていただいた時は、ちょうど『地獄のガールフレンド』の連載が始まった頃でした。『おんなのいえ』、『先生の白い嘘』と3本並行しての連載は、たいへんじゃないですか?
鳥飼 「じごガー」は、いま2巻が出たところですが、担当さんには絵がかわいくなったと言われてますね。
——女性誌連載でも『おんなのいえ』とはまた違うタッチになってますね。
鳥飼 意識的に、絵柄は作品によって変えようと思っているんです。読者も話のトーンも違うし、描いてる側としても気持ちを変えたいというのがあって。「じごガー」は『おんなのいえ』に比べてコミカルで1話も短いのでライトな感じで描かなきゃと思っていたのですが、最初の頃はなかなか絵が決まらなかったかな。お話のトーンが固まるにつれて、目指していたキャラクター性が顔前に出た顔が描けるようになってきた気がします。
——やっぱり作品は描きながら育っていくものなんですね。
鳥飼 カッコよく言うとそうですね。
——この作品はどのような構想からスタートしたのでしょうか。
鳥飼 最初にあったのは、子どもがいる女の人を描くということ。私も子どもがいることもあって……「フィール・ヤング」読者の年齢層にもあうかなと。一方、主人公の要素があまり自分と重なりすぎると距離を置いて描けないかもと……それならほかにも違った境遇の人を置いて、いろんな目線をつくろうと考えたんです。
——ルームシェアという設定にしたのは?
鳥飼 舞台を家のなかにすると人を自然に描けるかなと。最初は会社の同僚にしようかとも思ったんですけど、それだと広がりすぎそうで。日々の女子同士のおしゃべりみたいなことを描きたかったので。
——キャラクターは身近な人がモデルになっていたりしますか?
鳥飼 そのままというわけではないですけど、ヒントになった人はいます。最初のほうで悠里さんが「人生の目標は目下寿命が1日も早く来ること」なんて言ってますけど、これは飲みにいったときに私の友だちが言ってたことです。「やなことがあるとかじゃないけど、これ以上おもしろいこともなさそう」って……。私は死ぬの超こわいんで、その感じがわからなくって。なんでこんなふうに思えるんだろうと。仲がいい相手でも全然理解できない発想が出てきて驚かされるとともに、知りたいと思うんです。
——人ってそれぞれ違うことを考えてるものですよね。共感するばかりが仲がいいこととは限らない。
鳥飼 そうですよね。彼女は決してネガティブなわけじゃないんですよね。彼女は日々激務をこなしてる仕事のできる人で……あ、やっぱり悠里さんに似てるかな。「恋人ができたばかりで浮かれている後輩が会社来て『寝不足なんすよねー』とか言ってくるのがホントだるい」って言ってた(笑)。私は会社勤めの経験がないからこういう話を聞けるのもおもしろいですね。
——「じごガー」の3人は赤の他人という関係からスタートしていますが、この意図するところは?
鳥飼 友だちじゃないことを押し出して描いてるつもりもないんですけどね……でも、友だちじゃないところがいいと言ってくださる読者の方もいるので、そう見えてるのかな? 自分に友だちが少ないので……友だちがいっぱいいる人の話が思いつかないから自然とそうなっているのかも。今って友だちが多くてナンボみたいな風潮がどんどん強くなっているので、そこに一石投じたい……というほど鼻息荒くはないですが(笑)。
——SNSが盛んになるほど、「結局友だちってなんだろう」と考えさせられることが多くなっているかもしれません。
鳥飼 「じごガー」を始めてから、そうしたことをインタビューで聞かれるようになりましたね。「マウンティング女子についてどう思いますか」とか。そういう質問が出るってことは友だち関係に悩んでる人が多いんだなって。
女の子同士はどうしたらスッキリと、ストレスなくつきあえるのか?
——「じごガー」の3人は仲よくしてはいるけど「友だちだよね」という縛り合いはないし、お互いに全肯定しあってないところが読んでいてラクで心地いいんですよね。好きな人の発言だからって必ずしも「そうだよね」と同意しなくてもいい。
鳥飼 そういう感情はどけて描いてますね。
——その瞬間に対しての素直な反応をとらえるという感じ?
鳥飼 そうです。そういう態度をとっていれば、女の人同士はもっとスッキリつきあえると思うんですよね。だれでも自分と相容れないところがあるのは当たり前なのに理解できない考え方や発言に対して、仲よしだから肯定しなきゃいけないと思いこんだり、逆に「わからないからこの人は嫌い」と思ったり、混ぜこぜにすると苦しくなる。
——そういう体験をしたことがありますか?
鳥飼 あります、あります。中学時代、そういうことがいっぱいあってホントにイヤになった時期があって“女友だちいらない”って決めた。それ、1話の冒頭に描きましたね。そこから女の人と距離を取って生きるようになったんです。距離を取ったほうが友だちになりやすい。
——結びあう時に結びあえばいい、と。
鳥飼 いらない時はいらないという距離をとってつきあえば楽だと気づいたんですね。なので、マンガのなかでも徹底的にそうしてます。「じごガー」を読んでこういうふうにつきあえたらラクだなと思ったら取り入れてほしい。そういう人が増えれば私にとっても過ごしやすい世のなかになるということで(笑)。