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『地獄のガールフレンド』鳥飼 茜インタビュー 女子ってなんか、めんどくさい。でも女子ってなんか、にくめない!

2016/04/09


「女の敵は女」にもの申す!!

——『地獄のガールフレンド』というタイトルにはどんな意味があるのでしょうか。

鳥飼 よくぞ聞いてくださいました(笑)。これは、アメリカで女性初の国務長官になった方のスピーチにあった言葉に影響を受けてつけました。彼女がさまざまなキャリアのなかで痛感したのは「女の人同士で協力しないといけない」ということだったと。割合的に女性の少ない環境でやり抜くのはただでさえ厳しいのに、女同士で足を引っぱりあうことがあるのは無念、少なくとも女同士は助けあわなくちゃダメだと。そこで、彼女が言うには「女同士助けあわない女性には、地獄に専用の場所が待っている」と。すごくカッコいい言葉だと思って、いつか何かに使えたらいいなと。彼女の言葉そのままの意味ではないですけど……苦境をともに助けあい、地獄でもガールフレンドでいられたら、という思いをこめています。

——伝わってますよ! 言われてみれば「地獄」という言葉にマイナスのイメージはまったく感じていませんでした。

鳥飼 そこはタイトルロゴのデザインの力も大きいと思います。1巻が出るとき、デザイナーさんがすごくこだわってポップにしてくださって。「『地獄』という字面が強いから、絵はちょっとでもドロドロしたものを想像させるような要素はなくそう、かわいく軽く」と細かく指示をいただきました。

細部までこだわられたジゴガの表紙。タイトルと内容に配慮した細くて軽さのあるフォント、レイアウトがますます本作を魅力的にする!

細部までこだわられたジゴガの表紙。タイトルと内容に配慮した細くて軽さのあるフォント、レイアウトがますます本作を魅力的にする!

——それでいて、ベタベタした友情関係じゃないこともわかります。

鳥飼 「顔をコミカルに」との指示もありました。たとえば1巻の裏表紙の奈央さん、目が笑ってて瞳を描いてない。これはマンガの鉄則からははずれてるんです。

マンガ表紙の鉄則を打ち破ることもいとわない! 「じごガー」単行本のデザインを担当するのは、数多くのマンガのデザインを手がけ、定評のある名和田耕平氏だ。

マンガ表紙の鉄則を打ち破ることもいとわない! 「じごガー」単行本のデザインを担当するのは、数多くのマンガのデザインを手がけ、定評のある名和田耕平氏だ。

——そういえばそうですね。

鳥飼 奈央さんが一番男ウケするキャラで、「女の敵の女」みたいに見えたら損だからとにかく無害化してくれ、作品ののんびりしたムードが伝わらないとダメ、という指示でこの顔になったんです。最初は正直やかましい人だなぁと思いましたが(笑)、最終的には納得がいきました。このデザイナーさん、なんて賢い人なんだろうと……。

——そこまで深く考えられていたんですね。たしかに、女性って絵から情報を読みとって想像する力に長けていますし。女3人のなかにひとりモテるキャラがいた場合、仮想敵ポジションを予想しがちではあります。マンガ的にはモテる女は性格悪い役割を与えられがちですし。

鳥飼 ステレオタイプがとにかく嫌いなんですよね。そういうキャラクターを描くのは苦痛だから、そもそも描けない。がんばってステレオタイプから離そうとしているわけではないです。ともするとわかりにくいキャラクターになってしまうから難しくはあるんですが。モテるのは奈央さんの一要素で、女の人から見ておもしろい人だということが伝わるようにしたい。

——そうでなければ多くの女性読者は、加南さんか悠里さんの目線で読んでしまうはず。「じごガー」はだれかひとりに寄るでもなく、3人のおしゃべりに混ざりながら読んでいる感覚があります。

鳥飼 このなかに入りたいっていう感想はよくいただきますね。


仕事場のおしゃべりのなかからエピソードが生まれる

——ツッコミあうではなく、3人それぞれの素直な言葉が出てくるおしゃべりがとにかく心地よいのですが、お話はどんなふうに考えているのですか?

鳥飼 アシスタントさんとのおしゃべりのなかでふくらんできますね。これはもう共作じゃないか、くらいに。私、ニュースサイトを見るのが好きなんです。「○○な女の特徴とは?」とか……くだらないなとか思いながらも読んじゃう。女性誌も好きですし。こういうところから得た「現代の男女関係はこうである」「こんなとき男の子にどんな態度をとるか」みたいなネタをアシスタントさんたちとああだこうだ言いながら仕事してるんですね。私ならこうする、いや私はそれ無理とか、いろんな意見が出てきて白熱する。そういう雰囲気がごくリアルタイムで反映されてますね。

——テーマが尽きることはなさそうですね。

鳥飼 もう宝庫ですよ。アシスタントさんがいなければできない作品かも。

——「じごガー」の場合はたまに“大きな男の子”がひとりまぎれこんでますが。

鳥飼 うちの職場にも男の子がひとりいるんですよ。

——え!? リアル鹿谷くんですか?

「じごガー」のスパイス担当(?)・鹿谷くん。「処女厨」を宣言する彼だからこそ安心できる……いや、安心できるのか!?

「じごガー」のスパイス担当(?)・鹿谷くん。「処女厨」を宣言する彼だからこそ安心できる……いや、安心できるのか!?

鳥飼 いや……鹿ちゃんじゃないですね。もっとずっとまじめな人です。「じごガー」に鹿谷くんを入れたのは、男の子がひとり入ると話がしまるというか、ピリッとするからです。絵的な意味でも。

——鹿谷くんは強烈なキャラですしね。彼の男子ならではの意見も、3人の会話に花を添えているのも注目しています。


“女子コミュニティ”にはスパイス(男子)も必要!? ……ということで、今回はここまで! 鳥飼先生のインタビューの続きは4月下旬に公開予定ですので、こちらもお見逃しなく☆
『地獄のガールフレンド』はフィール・ヤング(祥伝社)で好評連載中! 4月8日に発売された最新号は『地獄のガールフレンド』の表紙がめじるしです!

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取材・構成:粟生こずえ
撮影:高部哲男

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