日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『La Vie en Doll ラヴィアンドール』
『La Vie en Doll ラヴィアンドール』第3巻
井上淳哉 集英社 ¥600+税
(2016年4月19日発売)
著者の井上淳哉は『BTOOOM!』や
『おとぎ奉り』で有名な作家。
同時にゲーム会社ケイブのシューティングゲーム開発にも関わっていた。なかでも『デススマイルズ』シリーズでは、少女たちが戦う耽美な世界観で人気を博した。
本作ではそのキャラクター表現力を存分に発揮。ゴシックロリィタドレスを身にまとった少女たちが、ド派手なアクションで飛び回るバトルを描いた作品だ。
内気でさえない、春野かすみ。彼女のもとに、行方不明の父親から小さな鏡と指輪が届いた。
指輪を身につけ鏡を覗くと、強気で暴力的なもうひとりのかすみ「くすみ」に人格が入れ替わるようになる。
黒いドレスに身を包んだくすみは、電撃を自由に操ることができる「聖少女(バージイナ)」としての力を手に入れた。
かすみ(くすみ)は、なぜか外国人と聖少女たちに命を狙われる。
事情がわからないまま、彼女は戦わざるをえなくなる。
第1巻は突然巻きこまれてしまった様子を、第2巻ではかすみ自身は意志を持って行動することが可能なのかを描いた。
最新第3巻ではついに、なぜ変身するのか、なぜかすみなのか、何と戦っているのかが、一気に明らかになる。
8人の聖少女を管理する組織「シャンデリア」。要人の暗殺や政治の裏工作などを行い、世界の秩序を守っているとうたっている。
ここまでわかれば、かすみ(くすみ)は「シャンデリア」に敵対するべきか、逃げるべきか、考える余地が出てくる。
シャンデリアの少女たちは全員、人間をあっさり殺せるレベルの能力持ち。
しかし中身は幼い少女。常にいきあたりばったりで、気まぐれだ。
特にユニークなのは、肉塊と言っていいほどまるまる太ったエリザベータ。登場する聖少女がみな華奢な美少女なので、とても浮いている。
彼女の暴食っぷりは、幼さゆえの奔放さの表現だ。
かすみ(くすみ)を含む8人全員、「少女」の記号をうまく切りとっている。
かすみ(くすみ)が7人のうち残りの聖少女を倒せばいいのか? と思いきや、第3巻では倒したはずの聖少女が復活し味方についている。単純に戦えばよいわけではなくなった。
ケタケタと笑う美しい黒づくめの少女たちのなかで、不器用で感情をはっきり表せないかすみ(notくすみ)は決断を迫られる。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」