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『それでも町は廻っている』第15巻 石黒正数 【日刊マンガガイド】

2016/05/20


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『それでも町は廻っている』


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『それでも町は廻っている』第15巻
石黒正数 少年画報社 ¥575+税
(2016年4月30日発売)


探偵小説大好きな高校生・嵐山歩鳥(あらしやま・ほとり)によるへっぽこ推理と、彼女の周囲の人間たちを描く群像劇もついに15巻目。登場人物は、かなりの数になってきた。

第15巻には大きな転機が2つある。
ひとつは、歩鳥たちの修学旅行。高校時代の一大イベントがついに描かれる。
歩鳥たちはお風呂でいたずらを仕掛け、大雪山で鳴らないムックリに挑み、アイスパビリオンでバナナで釘を打って大はしゃぎ。
そうそう。高校時代は躁状態だよね。もっともだいたいの出来事は実際たいしたことがなく、しょんぼりバーガー。あとからじわじわと、ノスタルジックになるもの。

もうひとつは、歩鳥がもっとも親しくしていた紺先輩の引っ越しだ。
ひとつ上の紺先輩は女子大への進学が決まり、卒業。両親といっしょに暮らすことになるという。
彼女の両親はイギリスにいたはず……。紺先輩の家に走っていく歩鳥。部屋を引き払うために片付けをしている紺先輩。
片付けを手伝い始めた歩鳥に、紺先輩は言う。
「……お前のおかげで 割と高校楽しかったよ」

大好きだった先輩の卒業。泣きはらした顔。まるで最終回だ。
しかし物語は終わらない、正確に言うとすでに通りすぎているのが、このマンガのすごいところだ。

『それ町』は、時系列がシャッフルされており、話数どおりに話がつながっていない。
たとえば第1巻第1話は、第12巻第90話の入学式の後の話。第15巻第121話で紺先輩の卒業が描かれるが、同じ第15巻第114話の修学旅行はその1カ月以上後の話で、第14巻の第107話はさらに数カ月後の、3年生の夏休みの話だ。

節目になっている第15巻を読んだあとに、その後だと思われる回を読みなおすと、見え方がガラッと変わる。
歩鳥は紺先輩との別れ(?)を乗り越え、画家志望の先輩・室伏涼ちんと出会い、成長していたのがはっきりと見えてくる。

時系列を解くヒントは、どの話にも必ずある。
最大の鍵は、歩鳥の髪型。ぜひ過去の巻も読みなおしてほしい。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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