「バカ」という言葉は、基本的に人を罵倒したり卑下するときに使うものです。でも、時と場合によっては、「バカ」が“愛すべき相手へのほめ言葉”にかわる瞬間って、ありますよね?
マンガのなかにも、どうしようもない行動をしているのになぜか憎めない、かわいいバカキャラはいっぱいいます。
今回は、人気バラエティ番組や「日本オタク大賞」などのトークイベントを担当している、構成作家・齋藤貴義さんに、愛すべきかわいいバカキャラたちが登場する作品を教えていただきました。
「kawaii!」は女子だけのものじゃない! 男性読者も悶える、かわいいマンガがこれだ!!
齋藤貴義さんイチオシの3作品!
『木曜日のフルット』石黒正数
『木曜日のフルット』第4巻
石黒正数 秋田書店 ¥419+税
(2014年9月8日発売)
日常系と思わせておきながら、ミステリ仕立てだったり、SFテイストだったりと、趣味全開の要素をぶっこんでくださる石黒先生の「かわいい系」猫と飼い主を主役にした4コママンガです。
帯では「かわいい猫のフルットが……」といった一見さんを欺くキャッチコピーが印象的ですが、そう一筋縄では行きません。4コママンガとしてのオチはスタンダードかつ、万人にわかりやすいていねいな作品という印象なのですが、作品の魅力は、登場するキャラクターたちの愛らしさと、逸脱した個性。
フルットの飼い主「鯨井先輩」は、いしいひさいちの「バイト君」なみにいじましく、ほほえましく。そして何より自由です。
身のまわりの些細なことに、じくじく悩んでしまうような気分のときも、これを読めば「もっと自由になれる」「人生どうにでもなる」気がしてくるはず。
『化け猫あんずちゃん』いましろたかし
『化け猫あんずちゃん』
いましろたかし 講談社 ¥570+税
(2007年11月16日発売)
ちょっと古い作品ですが、まだ買えるはず、ということで。
ガロ的な匂いを現在に残し、カルト的な人気を誇るいましろ先生といえば、『デメキング』、『ハード・コア』といった、やるせない系青春モノが代表作としてあげられますが、ぼくの一番好きなのはこの作品。
そのガロ的なムードをキープしつつ2006年に「コミックボンボン」で連載したという衝撃的な一作ですが、内容は、まったくの無衝撃!
日々、大事件が起きても(仮に宝くじで3億円が当たっても)いつもと同じ日常と時間が流れ続けるほど、非衝撃。その均衡を保つのが、あんずちゃん(猫)。動物としてのかわいらしさと、自由で、男らしさをあわせ持つ稀有なキャラクター。男なら目指すべき猫、それがあんずちゃんです!
大人の男がいることの安心感。癒され、勇気づけられる1冊です。
『新オバケのQ太郎』藤子・F・不二雄
『藤子・F・不二雄大全集 新オバケのQ太郎』第3巻
藤子・F・不二雄 小学館 ¥1,700+税
(2012年5月25日発売)
かわいいバカヤロウといえば、はずせないのがQちゃん!
のんきで、自由で友だち思いのQちゃんは、男の子たちのアイドルです。
そんな『オバケのQ太郎』が、満を持して、てんとう虫コミックスとしての復活が決まり、気軽に読みやすくなりましたが、『新オバQ』にたどりつくにはもうちょっと時間がかかりそう。
なんといっても『新オバQ』の楽しみは、かわいいO次郎の参加でにぎやかになった幸福感。そこで、一足お先に刊行されている「大全集」で読み始めませんか?
一番のオススメは、「小学五年生」「六年生」掲載パートが収録された第3巻です。巻末には珍しい「月刊少年ジャンプ」掲載版に、スピンオフでO次郎の初恋物語を描いた「ペケポコ、バケラッタ」も収録されています。
レアキャラクター、ドロンパの妹・ペロンパのかわいさまで味わえるのは、現在、大全集だけ!