日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『衛府の七忍』
『衛府の七忍』第2巻
山口貴由 秋田書店 ¥562+税
(2016年5月20日発売)
『覚悟のススメ』、『シグルイ』などで知られる山口貴由の新作『衛府の七忍』は、その作家性の集大成とも言うべき第1巻からして、控えめに表現しても「鬼ヤバい」としか言い表せない作品であったが、続く第2巻はさらに期待を上回るすばらしいできばえ。
もはやどんな言葉をもってしてもいかなるマンガか伝えるに足りないため、あえて「なにこれ超ヤバいんスけど」と呆けたように褒め称えるしかなかった……とまず言っておきたい。
以下、解説じみたことを小賢しく書くより「とにかく読め!」で終わらせてしまいたいのが本心であり、世に言う“ガルパンおじさん”が「ガルパンはいいぞ」としかつぶやかないのも、きっと同じような気持ちなのだろうな……と“「言葉」でなく「心」で理解できた”ような気がしたのだが、ここで終わっては職務放棄もはなはだしいので、いちおう内容についても触れておこう。
舞台となるのは大阪城が落城して間もない元和元年。
天下統一をなしとげた徳川家康は、さらにその支配を安泰なものとするため、豊臣の残党である「落人」を完全討伐を図る。そして「覇府の印」なる手形を与えられた民兵たちにより、落人ばかりか少しでも幕府の意にそぐわない者たちが山口貴由テイスト全開で容赦なくブチ殺されていくなか、無念の果てに「怨身忍者」となって蘇り、反旗を翻す者たちが現れる──。
第1巻では「零鬼編」「震鬼編」が描かれ、『覚悟のススメ』や『エクゾスカル零』などの登場人物と見た目や名前を同じくするキャラクターが、七面六臂の活躍で五臓六腑をまき散らすにとどまらず、邪悪にもほどがある桃太郎やら徳川の巨大ロボらしきものまで登場して期待を煽りまくりだったワケだが、第2巻も過激さと過剰さはとどまるところをしらない。
なんといっても驚かされたのは、それぞれのエピソードが超ハイカロリーではあるものの、おそらく「七忍」がそろうまではオムニバス的にストーリーが進行するのだろうなぁという予想が、気持ちいいほどに打ち砕かれたことだろう。
「えっ!? 七忍って全員が徳川に仇なす者じゃないのかよ!」という展開に加え、訓練された山口貴由ファンであれば、しばらく放置も覚悟していたカクゴが再登場! 失礼千万であることを承知のうえで書くなら、「どうかしてるマンガとして最高」であることは言うまでもないことだが、「ちゃんとしたマンガとしてもおもしろい」からいよいよ鬼ヤバいのである。
この文字どおり筆舌に尽くしがたい大傑作、未読の人にはまだ既刊2冊を今のうちに読むことを強くオススメ。
そして、ただ呆然と圧倒的な表現に打ちのめされていただきたい。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。