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『死役所』 第6巻 あずみきし 【日刊マンガガイド】

2016/07/25


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『死役所』


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『死役所』 第6巻
あずみきし 新潮社 ¥560+税
(2016年7月9日発売)


死役所――それは、この世とあの世の境界に存在する。

死者は、この「死役所」で成仏するための手続きをする必要がある。
手続きすべき課は、死因に応じて「自殺課」「他殺課」「癌死課」「交通事故死課」……と複雑に分かれているため、お客様である死者が迷わないように誘導する者が必要となる(なにせ、死亡日から49日以内に手続きを終えないと、成仏できなくなってしまうのだから)。
そうした面倒な「総合案内係」を務めているのが「死役所」職員のシ村である。
シ村が出会った死者たち、そして「死役所」の職員(職員は、シ村を含め全員が死刑囚)の人生を描いてきた本シリーズも、7月発売の最新刊で第6巻を数えることとなった。

本書の主人公、シ村は、黒い髪を七三に分け、黒縁眼鏡をかけ、ダークスーツをまとった、いかにも「お役所の人」という風貌である。眼鏡の奥の目は細く笑っており、口元には常に笑みを貼りつけている。「お客様は仏様です」が口癖であるが、問われたこと以外は答えず、その点を同僚らにツッこまれると「聞かれませんでしたので」と慇懃に応じる。

シ村は、感情を表に出さず、淡々と業務をこなすのだが、ときどき「怒り」などを表すことがある。
そうしたギャップがいいのである。

シ村も死刑囚なのだが、それは冤罪だったと判明している。
そうした場合は、成仏できるのだが、シ村はあえて「死役所」にとどまっている。さらに、面倒な「総合案内係」という業務もみずから志願したようで……、と何かと謎に包まれた人物で、そうした神秘性もキャラとしての魅力につながっている。

第6巻に登場するのは、地蔵を彫り続けるホームレス、セクハラの標的となった美人OL、そして夫を愛人に殺害され、その後女手ひとつで息子を育てあげた老女(老女の夫を殺した犯人が、じつは「死役所」の職員であるニシ川)、といった死者たちで、各々の人生を作者・あずみきしはじっくりと描きあげ、読者を引きこむドラマに仕立てあげている。個人的には、2つ目のOLが殺害された不条理な話が好みである。

第6巻は、ニシ川がシ村の過去を調べ始めるところで幕となる。
シ村=志村正道(第6巻で、ついにシ村のフルネームが判明した!)の人生とは、いったいどんなものであったのか。それは今冬発売の第7巻で明らかにされることだろう。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。、「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)でミステリコミックの年間レビューを担当。

単行本情報

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