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『死役所』第3巻 あずみきし 【日刊マンガガイド】

2015/03/26


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『死役所』第3巻
あずみきし 新潮社 \560+税
(2015年3月9日発売)


なんらかの理由で死んだ者が、死後に自ら「死亡申請書」を提出する役所。それがタイトルにもなっている「死役所」だ。
その死亡理由と、死んだ者をとりまく人々が物語として描かれるのを基本フォーマットとする、各話完結型ストーリー。

しかし、世にあふれる「死=泣ける話」みたいなものを想像してはイケナイ。人の死ぬ理由は様々なワケで、お話としてはどういうタイプなのか、毎回まったく予想がつかない。
徹底的に鬱々とした話かと思いきや、ラストで少しだけ救いがあったり、逆にハートフルな話かと思っていたら、とんでもなくゾッとする真相が隠されていたり……かと思えば、「これ、ド直球の泣ける話じゃないか!」というエピソードを放り込んできたりもするので、本当に最後まで油断がならない。

最新刊の3巻に登場するのは、孤高のお笑い芸人にスマホ依存の女子高生、そして「自分は殺人事件の被害者」と言い張る女子大生。
それぞれの死に様や真相につながるため詳細は伏せておくが、見どころのひとつは、往生際の悪い女子大生のおかげで垣間見えることになる、「死役所」の中の様子。

そして、第1巻で「死役所」で働いているのは死刑囚だということが描かれていたのだが、主人公・シ村(もっとも、メインとなるのは毎回あらたに死んだ人なので、どちらかといえば進行役に近い)の過去がついに語られるのか?という、猛烈に続きが気になるところで次巻へと続いている。

基本的には各話完結とはいえ、レギュラーで登場するキャラクターのエピソードの挟み方はじつに心憎い。
慇懃無礼(いんぎんぶれい)で本心をほとんど表に出さないシ村の過去に何があって、まったくそうは見えないが何をやらかして死刑になっているのか──そんなの気になるに決まってるじゃないですか!

というわけで、この一筋縄ではいかないヒューマンドラマが、次にどういう球を投げてくるのか楽しみでしょうがない。
少なくとも、物語が完結するまでは死にたくないものです。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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