365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月10日はカロリーコントロールの日。本日読むべきマンガは……。
『林檎でダイエット』
佐々木倫子 白泉社 ¥390+税
8月10日、きょうは「カロリーコントロールの日」だ。
カロリーを控えた栄養バランスのよい食生活の大切さについて啓蒙するため、江崎グリコ株式会社が制定したそうだ。
う~ん、耳の痛い言葉、カロリーコントロール! まぁ『林檎でダイエット』でも読みましょうよ。
『動物のお医者さん』、『おたんこナース』、『チャンネルはそのまま!』など、日常のなかにじわじわとしみ出すヘンな気持ちを描く天才・佐々木倫子の初期短編読み切り集だ。
メインは美人姉妹シリーズで、主な登場人物は姉の雁子(かりこ・園芸マニアでとてもおっとりしている)と妹の鴫子(しぎこ・美大で塗装工芸を専攻していてしっかりしている)。
「これはなんのお話?」と聞かれると、とっても困る。とにかく、雁子と鴫子が2人で暮らす様子を描いたお話しですとしか……。
たとえば、表題作の「林檎でダイエット」。
最近太り気味だからと、林檎ダイエットを始めた雁子。青果店のオニイサンに「好きな人にデブといわれると想像するとダイエットがうまくいく」といわれたのを真に受け、ダイエットのために好きな人をつくろうとする。
ここで、多くの少女マンガならときめきラブストーリーが始まるのだが、佐々木倫子ワールドではそうは問屋がおろさない。
詳しい説明は避けるが、意図的に好きな人を作ろうとする雁子が周囲からあきれられたり、怒りを買ったりするわけだ。
大事件は起こらないし、日常のささやかな幸せを実感できるようなほっこりエピソードもない。
だけど、読むとじわじわヘンな気持ちになっていく。
なんていうか……、思考に突然ブラックホールが開いちゃう感じ?
ものすごい善人も悪人も登場せず、ひたすら日常生活を描いた作品なのに、風がわりで浮世離れした印象。
おそらくだれの心にも未知の扉を開かせる作品なので、ぜひ読んでくださいませ。
<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。