365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月20日は親父の日。本日読むべきマンガは……。
『コミック文庫 じゃりン子チエ』 第1巻
はるき悦巳 双葉社 ¥571+税
本日は8月20日。もうすぐ夏休みが終わってしまう……。大人だから夏休み関係ないけど。
さて、本日は親父の日である。ええ、お察しのとおり、お(0)や(8)じ(20)の語呂合わせでござい。
マンガ界に燦然と輝くベストオヤジニストといったら、「オイ、鬼太郎」でおなじみの目玉の妖怪かしら。「これでいいのだ?」とか叫ぶパパも捨てがたい。少女マンガ界では、娘かわいさのあまり奇行に走ってしまう心配症の親父もいたなぁ。
しかし、チャンピオンの親父といえば竹本テツだろう。
『じゃりン子チエ』の主人公・自称「日本一不幸な少女」こと竹本チエの父親である。
テツのろくでなしっぷりときたら、右に出るキャラなし。昭和のアウトロー親父の見本だ。
チエいわく「そらあかんわ テツ金持ったらもうバクチに決まってる」
家業のホルモン焼き屋を小5のチエにまかせっきりで、小金が入ればすぐバクチをしてしまうテツ。
おバァはん(テツの実母)のセリフもすごい。
「おまえは人目に触れんように台所の隅にでもおったらええんや」
息子をゴキブリ扱いである。
おジィはん(テツの実父)は、女房に逃げられたふがいないテツのために世話を焼く孫娘のチエに頭が上がらない。
「スンマへ~ン テツがお世話なります~」
コレ、じいちゃんが孫にいうセリフやで。
チエちゃんは、ケンカとバクチが大好きなしょうがない父親・テツを食わせる(!)ために、きょうも腕一本でホルモンを売る。うう、涙を誘うねぇ。
でも、おバァはんに渡す売り上げからいくらか抜いて、自分のへそくりにしちゃうあたり、たくましさに笑ってしまう。「あの親や 今からきっちり貯金しとかんと」ですって。
でもテツだって、親の心を持っているんだなぁ。
「親バカかも知らんけど ワタシこの子はえらい子や思いますねん(中略)
ワタシ離れて暮らしているから…… それがようわかりますねん」
テツに愛想をつかして出ていった女房・ヨシ江と久しぶりに出かけた帰り道、テツは言葉もなく考えこむ。
たしかにどうしようもない人間なんだけど、その不器用さが人間くさく、弱くて優しい昭和の男像を立ちのぼらせる。
背中をこづいて「しっかりせぇ」といってやりたくなるのである。
<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。