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『デスストローク』 トニー・S・ダニエル(作・画) サンデュ・フロレラ(画) トム・モリー(彩色) 吉川悠(訳) 【日刊マンガガイド】

2016/09/05


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『デスストローク』


deathstrokes

『デスストローク』
トニー・S・ダニエル(作・画) サンデュ・フロレラ(画) トム・モリー(彩色) 吉川悠(訳)
小学館集英社プロダクション ¥2,100+税
(2016年7月20日発売)


2016年6月1日に日本で公開され、スマッシュヒットを記録したアメコミ映画『デッドプール』
日本での知名度は高くなかったものの、作品内容がウケて口コミで広まり、ヒットにつながった作品だ。そして、『デッドプール』の知名度アップに伴って、注目度が増したひとりのアメコミキャラクターが存在する。彼こそが、今回紹介する『デスストローク』だ。

デスストロークは、マーベルコミックスのライバル会社であるDCコミックスに登場するヴィラン。
暗殺を生業とする世界屈指の傭兵として1980年にデビュー。
自分のミスで子供を殺してしまった父親としての葛藤を胸に抱くキャラクター性と、全身に様々な武器を装備した姿(特に目立つのは背中に刺した日本刀)、失っている片目をモチーフにした左右非対称のマスク。仕事に対し高いプライドを持ち、その素顔はアイパッチに白髪という初老に近く、ヴィランでありながらダンディズムに貫かれたキャラクターは、当然ながら高い人気を誇っていた。

そして、その人気にあやかるかのごとく、マーベルコミックスに登場したのがデッドプールなのだ。
どれくらいパク……いや、オマージュを捧げているのかといえば、デッドプールの生みの親であるコミックアーティストのロブ・ライフェルドとライターのファビニアン・ニシーザが、誕生させる際に参考にしていると公言しているほどなのだ。

そんな出自のデッドプールは、後出しの強みともいえるぶっ飛んだキャラクター設定によって、大人気となり、映画化にまで到達して、ある意味本家食い……的になるかと思いきや、デッドプールの名前が広まるに比例して、本家のデスストロークの知名度もアップ。
近年では人気ビデオゲーム『バットマン:アーカム』シリーズでメインヴィラン級に扱われたり、テレビドラマ『ARROW/アロー』にも重要キャラとして登場したりと注目度も高く、近い将来劇場版映画にも登場するかもしれないキャラクターなのだ。

本書は2014年にスタートした単独シリーズ『デスストローク』の#1〜5をまとめたもの。
デスストロークのキャラクターを打ちだし直すべくスタートしたシリーズで、ロシアでのある仕事の依頼を受けたデスストロークが、じつは大きな陰謀の渦中に放りこまれていたという物語。

ある意味、長年デスストロークをよく知るファンには驚きの展開からスタートし、陰謀の謎を追うなかで、自身のすべてを奪い去った超人オデュッセウスの存在が関係していることを知る。
その後、自身の父親と息子という親子三代にわたる因縁を目の当たりにしつつ、消えた息子のあとを追って、戦いの舞台はゴッサムシティへと移っていく展開が熱い!

ゴッサムシティでは、「スーサイド・スクワッド」として共闘した経験のあるハーレイ・クイン、さらにはバットマンまでも登場。ヴィランの枠を超えてアンチヒーローとして成長を遂げたデスストロークの血みどろバトルは必見!

デッドプール誕生に大きな影響を与えたことも納得できる、その戦いぶりと生き様を堪能してほしい。



<文・石井誠>
1971年生まれ。アニメ誌、ホビー誌、アメコミ関連本で活動するフリーライター。アメコミファン歴20年。
洋泉社『アメコミ映画完全ガイド』シリーズ、ユリイカ『マーベル特集』などで執筆。翻訳アメコミを出版するヴィレッジブックスのアメリカンコミックス情報サイトにて、翻訳アメコミやアメコミ映画のレビューコラムを2年以上にわたって執筆中。

単行本情報

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