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【きょうのマンガ】7月31日は国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)がドイツ第一党となった日! おすすめするのは……

2014/07/31


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『劇画ヒットラー』
水木しげる 筑摩書房 520+税


1932年7月31日のドイツ国会選挙で、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党、ナチス)は、37.8%の得票率で587議席中230議席(改選前107議席)を獲得した。
社会民主党を抜き、ナチ党がはじめて第一党に躍り出た日である。

ナチ党は他党との内閣連立を拒否し、同年11月にはパーペン内閣への不信任案を提出。
ここで議席を減らす(第一党の座は維持)も、周到な根回しの結果、翌年1月にはヒットラー内閣が発足することになる。

手塚治虫『アドルフに告ぐ』や、異色どころでは藤子不二雄A『ひっとらぁ伯父サン』など、アドルフ・ヒットラーをモチーフにしたマンガ作品は数多い。そのなかで、ヒットラーの史伝となれば、水木しげる『劇画ヒットラー』が白眉だ。
売れない画家アドルフが、希代の独裁者へと成り上がっていく一代記であり、1932年のドイツ国会選挙から政権奪取までのプロセスも詳細に描かれる。

『ゲゲゲの鬼太郎』や『河童の三平』でおなじみの水木しげるテイストで描かれるヒットラーは、未熟で人間的に欠陥があり、それゆえにどこかコミカルで、凡庸な一市民に思える。
しかし、その凡庸な男が権力に魅入られ、大衆を魅了したのは歴史的な事実だ。

水木テイストで軽やかに突き放してヒットラーを描くと、その劇的なカリスマ性はスポイルされるが、そこに個人的な賞賛や批判を差し挟む余地は生まれない。あくまで客観的に史伝を描いており、さすがは御大、「劇物の扱い方」がよくわかってらっしゃる。
そしてまた、妄執に取りつかれていくヒットラーの様は、さながら水木マンガの妖怪のような滑稽さを持つ。

ドラマチックなバイオグラフィではない、とつとつとした水木版ヒットラーの姿に注目してみよう。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。

単行本情報

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