365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
9月18日は豊臣秀吉の命日。本日読むべきマンガは……。
『へうげもの』第12巻
山田芳裕 講談社 ¥543+税
戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した戦国大名であり、織田信長亡きあとに天下統一をなしとげた偉人として、日本史のなかでも格別の知名度を誇る豊臣秀吉。
その存在は歴史マンガというジャンルにおいても多大な影響を与えており、主役・端役を問わず、様々なマンガに登場している。
本日9月18日は秀吉の命日ということもあり、秀吉の逝去が特徴的に描かれたマンガをひとつ紹介しよう。
「数寄」と呼ばれる芸道に執心する武将・古田織部を主役にすえた一風変わった歴史マンガ・山田芳裕『へうげもの』。
豊臣政権の結末を描く第12巻では、死の際の孤独に苛まれる秀吉に対し、友情の証を示そうとする織部の奮闘が描かれている。
大大名たちを巻きこんだ宴会芸「瓜畑遊び」を堪能した秀吉は、愛妻・ねねが待つ茶室にたどり着くことで末期にして最高の安らぎを得るのだった……というあらすじなのだが、なんとその感動シーンに「住み慣れた 我が家に♪」から始まる、建築リフォーム会社「新日本ハウス」のコマーシャルソング・吉幾三『Dream ~「新日本ハウス」CMヴァージョン~』の歌詞が引用されているのだ。
歴史の分岐点である重大シーンにおいて、現代通俗の極みのCMソングをかぶせるという、一見するととんでもなく“外した”ものにも思えるこの演出だが、歌詞から漂うほがらかな爽やかさと、織部の心遣いがこめられた茶室がオーバーラップすることで、見事な融和性を発揮。
突飛な表現だと感じながらも、秀吉が感じている心地よさについつい共感してしまうという絶妙なバランス感覚になっている。
数ある「秀吉マンガ」のなかでも屈指のインパクトを誇る大往生っぷり。ぜひ、実際の紙面でご覧になってほしい。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。