日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『つまさきおとしと私』
『つまさきおとしと私』 第2巻
ツナミノユウ 講談社 ¥590+税
(2016年9月7日発売)
もし仮に「このヤンデレがすごい!2016」をやったとしたら、昨今ヤンデレキャラは増えまくっているので激戦になるだろう。だが、この作品のヒロイン・長妻咲(ながつま・さき)は確実にベスト5入りするはず。だって彼女、第2巻でヤンデレを極めてしまったもの。
「つまさきおとし」のとし君は人間に見えない。通りすがりの人のつまさきを切る妖怪だ。
ところがたまたまそれが見えた咲が、彼のことを気に入ってしまう。
彼女は「消しゴムで答案用紙を破いた人」「わが子のバイトデビューを偵察にきた両親」「試食を食べちゃうと買わされる気がして断ってしまう人」など、とし君がつまさきを切る相手に「理由」をつけ始めた。とし君、彼女の言葉が引っかかり、だんだん気になってくる。
咲の行動はヒートアップ。とし君のあとを付け回し、どんなところでも現れる。
とし君の話を聞かず一方的に自分のラブを語り続ける。彼とかかわりが持ちたくて、わざと叱られようとする。しまいにはとし君の髪の毛(?)を食べてしまう。
とし君は自分が妖怪で驚かせる側だというのに、咲のほうがはるかに恋に狂っていて、恐怖を感じ続けている。
何より怖いのが、咲がそばにいるのが当たり前になってきて、慣れ始めてしまったこと。咲に友だちがいないこと、自分のためにマメに努力していることなどがチラ見えするので、紳士なとし君、ついつい優しくしてしまう。
誘拐されたりして二度とかかわらないと決めたのに、声をかけちゃう。
第2巻ではとし君がどんどん陥落していく様が描かれる。
クラスであぶれてしまう彼女をさそって、2人きりで観覧車に乗る。
咲が怪我をしたのではないかとあわてて助けにいく。
孤独だった2人は、ラストに向かってどんどん距離を縮めていく。
ガラス越しに2人が(というか咲が一方的に)キスをするシーンは、ロマンティックだ。
ただしまわりの人には、咲が窓にひとりでキスをしているようにしか見えない。
2人が幸せなのか、奈落に堕ちたのかは、わからない。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」