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『つまさきおとしと私』 ツナミノユウ 【日刊マンガガイド】

2015/08/23


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『つまさきおとしと私』
ツナミノユウ 講談社 ¥560+税
(2015年7月23日発売)


「妖怪マンガ」のカテゴリに入れていいのかたいへん悩むマンガだ。

中学生の女の子、長妻咲が出会ったのは、「つまさきおとし」という妖怪。
靴の余ったところを切り落としていく不思議な存在で、わらをかぶったぬいぐるみのような姿をしている。

本来は無差別につまさきを切る妖怪だった。ところが勢いで「心のスキをつくのが俺の役目だ!」と虚勢を張ってしまったからたいへん。
咲はつまさきおとしを「とし君」と呼ぶようになり、彼を観察しはじめる。

手当たりしだいにつま先を落としていたとし君。なのに「ニュース中継の後ろでハシャぐ人のつまさきを切っているんだね」、「歯に挟まった食べカスを舌だけで取ろうとする人のつまさきを切ってるんだね」などと、とし君につきまとう咲がその行為に理由を求めはじめた。
次第にとし君も、つまさきを切ろうとするたびに、「これはどういう理由で切るのか?」と考え始めてしまう。

やがて咲はとし君のストーカーと化し、彼(?)に恋愛感情まで抱き始める。
「ああ……とし君が私を叱ってくれてる~!! 私幸せ!!」
「私だけはとし君のつらく苦しい孤独な戦いをわかってあげられる」
ほかの人にとし君は見えないので、周囲から見たら咲がひとりで騒いでいる状態。とし君、気が気でない。

とし君が叱るほどに咲の病理が深まるいっぽう。まったく対処のしかたがわからなくなってくる。
ところがふと「ここでつまさきを切ったら彼女は喜ぶのかな」と考えている自分に気づく。
咲が勝ったらとし君と一緒に暮らす、とし君が勝ったら咲はストーキングをやめる、という賭けをした時、咲ともう会えなくなってしまう、と彼は一瞬焦る。

病理でつながれた関係。2ページ1話形式で、メインキャラは2人だけ。咲の思考の狂いに、とし君がどんどんのまれていく。
友人を持たずとし君のストーキングを続ける咲と、追いかけられつつ咲のことが気になりはじめちゃったとし君の関係は、とても幸せそうだ。
こういうのを、何症候群って呼べばいいんでしょうね。

さてこの作品、公式Twitterアカウントも作られている。
長妻咲が書いている、という体のキャラクタートーク形式なのだが、日本各地ありとあらゆる場所の写真が淡々と貼られ、とし君が切り落としたと思われる靴が映りこみ、つぶやきすべてにハッシュタグ「#とし君」がつけられている。こわい。
咲は写真のなかに、とし君が見えているのか……?



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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