日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ファイアパンチ』
『ファイアパンチ』 第2巻
藤本タツキ 集英社 ¥400+税
(2016年10月4日発売)
一見シリアスだし、実際シビアな内容なんだけど……「本当になんなの!?」とツッコミを入れたくなるシーン満載。話の展開がトリッキーすぎて、当てはまるジャンルが見つからない。
ずっと冬が続き、雪と飢餓が世界を覆う、希望のない世界。
絶対に死なない再生能力者のアグニは、村を「焼け朽ちるまで消えない」炎で滅ぼされ、妹は殺された。焼けては再生し、再生しては焼ける身体の痛みに耐えながら、炎を放った男・ドマへの復讐に向かった。
絶対死なない、というのはチート級の能力だ。
ところが第1巻では首だけに。第2巻では首だけ切り取って燃えない布に包んで、地下鉄で輸送される。
主人公の最強能力を、そんなあっさり片づけちゃっていいの!?
第2巻は、「映画を撮る」といって世界をカメラに収めるトガタが、物語をめちゃくちゃに荒らしていく。
彼女自体が再生の祝福者で、格闘術を身につけているためとても強い。
どんな殺伐とした場面でも、カメラを構えて、ちゃんと演技してよー! とかいいつつ、息をするように人を殺す。生きるテンポが違いすぎて、だれとも会話が全然噛みあわない。
彼女は『バットマン』のジョーカーにあたる存在だ。
アグニの復讐への思いは非常に熱いし、共感できる。人を殺すことは、怒りと苦痛だ。
しかしトガタは、この世界の仕組みが嘘だと語る。彼女が殺すのはすべて「映画」であり、楽しみだ。
トガタ視点になると、アグニの戦いは一気にコミカルになる。
なんせトガタにとってアグニは主演男優「ファイアマン」でしかないからだ。
アグニは自分の行動の価値がわからなくなってくる。
第1巻は復讐譚だった。第2巻で全部ひっくり返されて、ドタバタロードムービーになった。
第3巻はどうなるのか、さっぱりわからない。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」