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『じけんじゃけん!』 第1巻 安田剛助 【日刊マンガガイド】

2016/11/27


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『じけんじゃけん!』


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『じけんじゃけん!』 第1巻
安田剛助 白泉社 ¥600+税
(2016年10月28日発売)


広島弁をしゃべる女の子って、いいよね。
語尾に「じゃけん」とつけられると、グッとくる。

本作は、そんな広島弁をしゃべる女子高生がヒロインの日常ギャグマンガ。

白銀(しろがね)百合子は「立てば芍薬/座れば牡丹/歩く姿は百合子様」とうたわれる、美貌の女子高生。
スポーツ万能、学業優秀な百合子だが、じつは「バカミスをほんまに馬鹿にする奴は死ね」と口にするほどの、筋金入りのミステリマニアでもある。

そんな百合子にひと目ぼれした、転校生で後輩の戸入(といり)は、彼女がひとりで立ち上げたミステリ研究同好会に入会。
戸入は、さほどミステリ好きではないが、洞察力はある。
そんな戸入の推理の才能を見抜いた百合子が「私が彼を鍛えて/もっと私好みにしてみせるけえ」という、取りようによってはエロい理由でミステリ研究同好会への入部を許可したのだ(それまでは百合子の審査基準が厳しく部員はゼロ)。

最初は、百合子と戸入の2人きりだったが、戸入のおさななじみの四ツ名や、百合子の親戚の娘・アイリスが集まり、徐々ににぎやかになっていく。

1話が8~12頁の短編マンガ。各話のタイトルが「ありばいじゃけん!」「ふーだにっとじゃけん!」とミステリがらみなので、ミステリマニアならニヤリとするだろう。
もちろん、題名だけでなく中身もミステリ味あり。
「じょじゅつとりっくじゃけん!」では、マンガならではの叙述トリックが登場する。
また「とうじょみすてりじゃけん!」で、百合子が戸入に仕掛ける捨て身の「毒殺トリック」(といっても塩水を飲ませるだけだが)もおもしろい。

ミステリマニアなら「あるある」となるだろうし、ミステリに興味はあるけど……という人にはひとつの入り口になるのでは? と期待できる作品。
何よりも、かわいいというより、大人っぽい美貌の女子高生が強烈なミステリ愛ゆえに奇行に走ってしまうギャップが笑えるのである。

著者の安田剛助は自身のブログ「安田堂」でも作品を公開している。
本作で、ご興味を持たれた方は、そちらもごらんください。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。「本格ミステリ・ベスト10」(原書房)にてミステリコミックの年間レビューを担当。

単行本情報

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