365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
7月1日は宝塚歌劇団の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『小学館文庫 ライジング!』第1巻
氷室冴子(作) 藤田和子(画) 小学館 ¥629+税
1913(大正2)年の7月1日は、小林一三が、宝塚歌劇団の前身・宝塚唱歌隊を結成した日である。
小林一三は阪急電鉄・阪急百貨店の創業者として知られる実業家。
ヅカファンにとっては常識だが、宝塚歌劇団は阪急電鉄に属している。沿線を発展させる開発事業のひとつだったわけだが、その人気は全国規模に。今も熱狂的なファンを増やし続けているのは周知のとおりだ。
一般的な演劇界とはまた異なる独特の美学を貫き続ける華やかさ、そのトップスターを目指す過程もドラマティック! 宝塚のイメージを題材にした作品には、現在連載中の『淡島百景』(志村貴子)、『かげきしょうじょ!!』(斉木久美子)などがあるが、ここでは80年代の名作を紹介しよう。
『ライジング!』のヒロイン・仁科祐紀は、アメリカ育ちのダンスが大好きな少女。
宮苑歌劇団団員養成所である宮苑音楽学校を受験、超難関を突破して合格してしまうが……フタを開けたらそこは祐紀が想像していたような“芸能専門学校”とはかなり違っていた!?
とまどいながらも歌劇団のスタイルに魅せられ、スターを目指していくステップアップストーリー。
日々の授業風景、火花を散らす級友たち……日ごろ仲のよい間柄であっても激しいライバル心を燃やし、厳しい世界でせめぎあう青春の情景に胸が高鳴る。
祐紀は次第に頭角を現し、歌劇団の本公演に学生ながら抜擢されるが、その道のりはけっして楽なものではない。
男役から娘役への転向、嫉妬のまなざしや多大なプレッシャー……自分の目指すべき道はどこにあるのか、悩みは尽きない。
そんななかでいつも祐紀の心の奥底にあるのが、彼女の才能を高く買う演出家・高師先生の存在だ。
しかし、高師は祐紀をけっして甘やかすことはない。買っているからこそ、自分を持った一人前の役者になってほしいという想いを持ち、ときには祐紀をつき放す。
深い愛情に裏打ちされた読みごたえのあるドラマである。
原作の氷室冴子は、80年代の少女小説「コバルト文庫」の大ヒットメーカー。寮生活を描いた『クララ白書』、コミカライズ版も人気を博した『なんて素敵にジャパネスク』、『ざ・ちぇんじ!』など代表作多数。
『ライジング!』作中の劇中劇のなかでも人気の高かった「レディアンを探して」は、のちに小説版も刊行されている。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」