日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』
『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』 第3巻
清野とおる 講談社 ¥650+税
(2016年11月22日発売)
東京都北区赤羽シリーズでおなじみの清野とおるが、独自の「おこだわり」によって退屈な日々に至上の喜びを見出した人々を紹介する『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』。
今年、松岡茉優と伊藤沙莉主演で『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』の名前でドラマ化もされた噂のシリーズの第3巻が出た。
そろそろネタ切れ? というのは、やはり杞憂なようで。
本巻でも、コンビニのフランクフルト、メロン、すしざんまい、オールドファッション……といった食べものから、フックのような便利グッズまで、様々なモノを独自すぎるこだわりあふれる方法で日々満喫している方々がずらり。
『マツコの知らない世界』を見ればわかるように、今や何か特定のものにこだわるマニアは決して珍しい存在ではなくなったし、そのこだわりぶりをブログやSNSで積極的に世のなかにアピールする人も少なくない。
だが、本作に登場する「おこだわり人」の自己のなかで詳細にルール化されたこだわり(ex:すしざんまいでも、特定の店舗で、しかも頼むメニューもオーダーの順番もこうでないとダメとか)は、他人と比較しようがない唯一無ニのものであり、いわゆるマニアとも一線を画する。
現代人というものは、だれかと比べることでしか「幸せ」を実感できないといわれるが、他人には理解しがたい自分だけのこだわりを、自分だけのひそやかな喜びとしてチマチマと楽しんでいる彼らの満ち足りた姿を見ていると、幸せってこーゆーもんだよなあ……と、しみじみ。
「狂ったようにこればこるほど 君は一人の人間として しあわせな道を歩いているだろう」という、ムッシュかまやつの曲の一節ではないが、自分も何かにこだわりたい、それ、俺にもくれよ!! という気持ちにおのずとなってくるワケです。
ということで、いかにも清野とおるらしい奇人変人列伝であると同時に、一種の幸福論ともなりうる1冊。
幸せのへの道が、きっとここにある!?
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69