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『ファイアパンチ』 第3巻 藤本タツキ 【日刊マンガガイド】

2016/12/28


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ファイアパンチ』


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『ファイアパンチ』 第3巻
藤本タツキ 集英社 ¥400+税
(2016年12月2日発売)


様々な能力を持つ祝福者が存在する世界。
氷の魔女というひとりの祝福者によって世界は凍てつき、あらゆる生物が絶滅の危機に瀕していた。
再生能力を持つアグニは自分の腕を切り落とし、食糧不足にあえぐ村の人々に提供していたが……。ある日、ベヘムドルグ王国の炎を操る祝福者・ドマが現れ、人肉で生き延びる民に戦慄! 怒りにまかせて村を焼きつくしてしまう。
最愛の妹を殺されたアグニは、その強靭な再生能力により数年の時を経て復活を果たし、復讐の炎を燃やすのであった――。

WEB上に第1話がアップされるや、「とんでもないマンガが始まった!」と大拡散、勢いそのままに『このマンガがすごい!2017』オトコ編3位に輝いた『ファイアパンチ』。
能力バトルというド直球の少年マンガ設定をベースにしながら、カニバリズム、近親相姦、拷問、男尊女卑、お下劣スラングと、禁断の刺激を全部乗せ。ところが不思議とお腹一杯にならず、ガンガンページをめくらせてしまう熱量は、まさしく“このマンガがすごい!”と喝采だ。

読者にトラウマを植えつけまくった第1巻から一転、第2巻では真の主人公とでもいうべきド変態女・トガタが登場。彼女はアグニ以上の再生能力を持つ祝福者で、すでに300年前後生存、格闘技の使い手ですこぶる強いという、情報量過多のキャラクターだ。

そんなトガタの趣味は映画観賞。
しかし大好きな映画のデータをベヘムドルクに燃やされ意気消沈。
だったら自分で最高傑作を撮ってやると意気込み、復讐鬼と化したアグニを主人公に抜擢する。
そこからトガタのアグニに対する厳しい演技指導が始まり…………。
「あれ? そんなマンガだったっけ?」と、肩すかしをくらった御仁もさぞかし多いことだろう。

これで失速しないのが『ファイアパンチ』のすごいところ。
最新刊となる第3巻では、ついにアグニがベヘムドルクに乗りこむのだが、そこに立ちはだかったのはドマではなく、強力な能力を持つ祝福者の凶悪犯たち。さすがのアグニも万事休すか――!? うん、王道の能力バトル展開に戻ってきましたね。

ところがこのバトル、両者ともトガタにうながされ、彼女が撮りたい画を提供しているだけにすぎないという……なんて、マンガだ!

レベルの高い脱力系ギャグがちょいちょい挿入されるのも楽しいし、とにかく全編、緊張と緩和の連続。この緩急こそが中毒症状を引き起こす最大要因なのだろう。
次巻を待ちきれない人は、「ジャンプ+」で最新話を貪り読むべし!



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。

単行本情報

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