日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『外道の歌』
『外道の歌』 第2巻
渡邊ダイスケ 少年画報社 ¥550+税
(2016年12月26日発売)
理不尽な事件に巻き込まれた被害者や遺族の魂を浄化するため、復讐屋のカモとトラが非合法の裁きをくだす――。
ネット上で展開された強烈なバナー広告も手伝って話題沸騰となった『善悪の屑』シーズン2の第2巻。
想像を絶する拷問シーンの数々で読者を戦慄させてきた本シリーズだが、この最新刊は少し趣きが違う。ママ友同士の関係性のこじれから女児殺害に発展する陰惨な事件を取りあげているが、序盤はじっくりと犯人の生い立ちがひもとかれ、人格形成を読み手に把握させたうえで、事件勃発~被害者母の復讐依頼~カモトラが仕事にかかるまでが描かれる。
メインディッシュである直接制裁も、「後味は悪いけどスッキリ」という定形には収まらない。
「展開が遅い」、「刺激が足りない」とクサすのは簡単だが、個人的にはネクストステージの突入を示唆した著者・渡邊ダイスケの心意気を歓迎したい。
拷問よりも犯罪者の心理描写に力点を置くことで、「正義とは何か」を深いところまで突き詰めていくことになるからだ。仕事を終えた直後にカモがトラに語る言葉が震えるほどすばらしいので、ぜひともコミックスを手にとって確かめていただきたい。
後半のエピソードでは漫画編集者の皮をかぶった練馬区の殺人鬼・園田夢二が再登場。
恐らくこの男が「カモメ古書店(復讐屋)」にとってのラスボス的な存在となるのだろう。
人間としての“大事な何か”が完全に欠落している最凶モンスターは何を考え、何をしようとしているのか? 4月発売予定の次巻が待ちどおしい。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。