日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『星野、目をつぶって。』
『星野、目をつぶって。』 第4巻
永椎晃平 講談社 ¥429+税
(2017年2月17日発売)
学校では人気者の明るいギャル、星野海咲。
じつは彼女、すっぴんになると全くの別人、ぱっとしないういろう顔。
人間嫌いの小早川は、美術の腕を買われて、星野のメイクを担当するハメになる。
メイクすることは、何かを変えようとする意思。
勇気をふりしぼって、一歩踏み出そうと迷走する高校生の少年少女を描く。
主人公の小早川と星野だけでなく、どの生徒もみんな高校時代は苦しみを抱えている。
ギャルもいれば、根暗も、体育会系もいる。いじめっ子もいじめられっ子も、リア充も非リアも、オタクも。
日々悶々と迷走する小早川は、ギャーギャー騒ぐリア充メンツを見て、バカばっかりだと嫌悪感を抱いていた。
けれど、みんなそれぞれ悩みと戦っている。
なかでも表紙の黒ギャル・加納の、描写の変化は目を見張るものがある。
学校では横暴で、自分勝手。白ギャル組の星野とは敵対関係で、犬猿の仲。
内気な少女・松方をいじめており、非難されても仕方ない行動を繰りかえしていた。
第1巻だけだと思いっきり悪役だ。
しかし第2巻では一転。数の暴力で学校の生徒たちが一斉に、加納を吊るしあげる。
とっさに彼女をかばった小早川。
第3巻では彼女が、じつはまじめで一生懸命なのに、あるトラウマゆえにみじめな思いをしないため、あがき苦しみながら強がっていたことを、小早川は知る。
彼女もまた、メイクすることで装甲しているひとりの少女。
メイクでポジティブに立ち向かうようになった星野と違い、加納は哀しみをガングロメイクで封じこめているかのよう。
第4巻、海で毎日肌を黒く塗っている彼女の様子は、あまりにも息苦しそうだ。
がんばれば自分を変えられるよ、なんて簡単にいえない。そのくらい、星野も加納も、生きるために必死なのだ。
みんなが痛い思いをして成長し、変化していく。
けれども、それがベストだったのかどうか、読者の見かたにゆだねられるラストが多い。
加納の場合、人間関係が変わって救われた部分はあるが、彼女の迷いの本質的解決はまだ見つかっていない。
それでも、変えてみようとすることは絶対無駄じゃないはずだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」