日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『孫子のアイドル兵法!』
『孫子のアイドル兵法!』 第1巻
わだぺん。 KADOKAWA ¥620+税
(2017年3月9日発売)
アイドル戦国時代。アイドルのマンガも戦国時代。
この作品は、正統派なんだけど意外な方向から切りこんでいて、「その手があったか!」と思わせられる。
商店街閉鎖の危機に焦る、15歳の富士塚さくら。
復興案としてあがったのが、ご当地アイドル。
元トップアイドルで地元に戻ってきた旭丘すずなは、さくらには人に愛される魅力があることに気づく。
かくして、さくらをナンバーワンアイドルにする作戦がスタート。
旭丘は「孫子の兵法」を活用して、さくらを育て始める。
『孫子』は2,500年前の兵法書。戦のみならず、ビジネスでも活用されている「人生攻略書」だ。
なるほど武田信玄も『孫氏』を愛読していたのだから、アイドル戦国時代でも活用できるはず。
ことあるごとに『孫子』の一遍を持ち出す旭丘の発言がおもしろい。
「能く敵人をして 自ら至らしむる者は これを利すればなり」
相手が自分から来るのは、相手に利益があると思わせるからだ、という意味。もとは戦争で敵を動かす方法。
アイドルに当てはめると、さくらの活動になんらかの利益があることを見せれば、おのずと彼女を応援する人たちが出て、協力してくれる、ということになる。なるほどおっしゃるとおり、ゴリ押すより効果的。
1巻ではまだアイドルですらないさくら。
孫子兵法を活用して、旭丘とどこまでのしあがれるかが、楽しみな作品だ。
ただ、今は町のためだけで動いているさくら、「自分の決意」で動く日がくるかどうかが、物語の分かれ目になりそうだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」