日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『金のタマゴ』第2巻
『金のタマゴ』第2巻
カツヲ 講談社 ¥429+税
(2017年3月9日発売)
ライトノベルというジャンルでの、売れる作品づくりを追求した作品。 いちおうはギャグ4コマだが、かなり具体的な部分に触れている。
ラノベ文庫編集部の新人、桜井珠子。夢は、担当作品が1,000万部売れること。
超絶ポジティブでマイペース、思いこみの激しい彼女。行動力はあるけど、反射で動いているので、論理立てた仕事ができない。
担当することになったラノベ作家が書いたものは、胸を張っておもしろいといえる作品だった。なのに、1巻を出したあと、ほとんど売れず続刊不可と判断され、打ち切り1巻完結。
珠子、さすがに落ちこみ、トラウマになる。
第2巻では、再起を図るべく先輩から「ラノベを読め!」といわれ、実行する。
1カ月、ずっとラノベを片っ端から読まされ続ける。苦行だ。
だがここまで読み込むと、目が肥えてくる。
新人賞の原稿の良し悪しも、お金になる文章とならない文章の違いも、自然とわかるようになる。
編集者はインプットが多くなくてはいけない、という指導だったのだ。
珠子は常に、“自分が”売れた・売れない、という構え方をしている。本来であれば“作家が”なのだが、のめりこむ彼女は一体化している。
だれかのためにではなく、“自分のために”売れたい、という勢いも開き直っていて気持ちいい。ここが『重版出来!』とアプローチの違うところ。
一方で堅実に売れる作品をつくるために数値計算をしていくマンガ編集者・高瀬数真が、彼女の比較対象として登場している。
彼もまた1,000万部売るための努力をしている人間のひとり。珠子のような感覚的に動くタイプではなく、がっちり計画を立てて、過去のデータを調べながら進めていくスタイル。
2人は張りあいながら、編集者として成長していく。
もちろんこの本に描かれている手法は、正解とは限らない。むしろ珠子の言動は大げさなので、明らかな間違いが多い。
ただ、本は売れないといけない。商売としてどう手をつくしていくか、珠子と数真の2つの切り口から、商業としてのエンターテインメントを考えるきっかけになるはずだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」