日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『白竜HADOU』 第1巻
『白竜HADOU』第1巻
天王寺大(作) 渡辺みちお(画) 日本文芸社 ¥575+税
(2017年3月9日発売)
どこの傘下にも属さない黒須組の若頭・白川竜也こと“白竜”の暗躍を描く長寿シリーズの新シーズン。
現実社会の事件等をモチーフにすることも多く、東日本大震災の直前にスタートした原子力マフィア編は、その後に起こる出来事を予見したかのような内容だった。
だが震災後、掲載誌の「週刊漫画ゴラク」サイドが任侠エンタメという作品の特性から被災者に考慮し、連載休止という措置をとる。のちに再開して完結したこのエピソードは、『白竜LEGEND 原子力マフィア編』(上下巻)としてナンバリングされずに刊行されているので、興味を持たれた方はぜひ手にとってほしい。
さて、前作『白竜LEGEND』の終盤で壮絶な出自が明らかになった白竜。
黒須組長との出会いと絆も描かれた感動的なフィナーレだったが、新シーズンでは舞台が現代の六本木に戻って来る。今回、白竜がシノギの匂いをかぎつけるのは、都内の一等地にある巨大市場の移転問題。そう、まさに現在進行形で物議を醸している“あの問題”にリンクしてきたのだ。
六本木で飛び降り自殺の現場に遭遇した黒須組一行。自殺した中年男性は東都ガス不動産の課長であり、築山市場移転の中枢にいた人物だった。多くの市場関係者が反対の声をあげるなか、東京都はなぜ強引に移転を推し進めたのか?
底知れぬ深い闇を感じ取った白竜は、市場移転の利権に食いこむべく動き始める。
白竜は一流大卒のインテリであり、外道なチンピラとは一線を画しているが、それでも基本はヤクザの論理で動く。ここだけはブレない。今回も自殺した課長の娘に接触し、身の安全を確保するが、それは義侠心からではない。彼女から情報を引き出せば大きなシノギにつながるからである。このクールさに読者は惚れるのだ。
一国の大統領にも匹敵する「東京都知事」という首長に敢然と立ち向かう白竜。先に動いてきたのは狡猾な都知事のほうだった。「始まりの始まりです」と不敵な笑みを浮かべる白竜。さぁ、カシラ(白竜)のお手並み拝見だ。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。