365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月22日はよい夫婦の日。本日読むべきマンガは……。
『ただいま、おかえり』
いちかわ壱 ふゅーじょんぷろだくと ¥675+税
本日4月22日は、「よい夫婦の日」。
1994年に「よい(4)ふうふ(22)」の語呂あわせで、講談社が制定した記念日だ。
夫婦ないしは家族でどこかへ出かけたり、食卓を囲んであったかいごはんを食べたり、そんな家族の幸せなワンシーンには、独身の筆者も憧れる。
そこで取り上げたいのが、本作『ただいま、おかえり』だ。本作に登場する夫婦は、とても幸せそうなのだ。
夫は妻、子どもを守り、妻は夫を支える。その2人の間で子どもはすくすくと成長。まさに理想の家庭だ。
……といっても、この家族は少し複雑な事情を抱えている。そう、本作は、近年BL界隈で人気の「オメガバース」設定の作品なのである。
「オメガバース」の世界観では、男女関係なく、全員が妊娠できる。なので、男性同士の結婚はごく自然にある。
この世界では、男性、女性という性別のほかに、α(アルファ)性、β(ベータ)性、Ω(オメガ)性という3種類の性別が存在し、アルファ同士、ベータ同士、オメガ同士で結婚するのが通例だ。
しかし、本作の夫婦は男性同士で、かつアルファ(夫・弘)とオメガ(専業主夫・真生)なのだ。
エリートを多く輩出し、社会的地位を約束されたアルファに対し、アルファやベータに劣る存在とみなされるオメガ。当然、オメガに対して、世間の目、特にアルファの人間からの扱いは厳しい。
それでも、弘(ひろむ)と真生(まさき)はいっしょになることを選んだ。
2歳になる息子・輝(ひかり)と3人で、毎日楽しく暮らしている。
会社ではエリートサラリーマンとして、バリバリ働く弘だが、朝家を出る前にスマホで撮った、真生と輝の動画を社内でえんえんと見ていたりと、真生と輝に対するデレデレっぷりはなかなかのもの。
普段はクールでも、家族に関することには喜怒哀楽が激しく、家族への愛情深さはひしひしと伝わってくる。
一方で、弘の愛を一身に受ける真生も、アルファである弘の父親と対峙してもけっしてひるまず、自分なりに家族を守ろうとしている。そしてそんな真生の姿を見て、まだ2歳の輝でさえ、家族を脅かす存在を敵視し、立ち向かうのだ。
けっして守られるだけの存在ではない。彼らは互いが互いの支えになっている。この優しくてあたたかい世界は、きっとこの先も続いていく。
<文・穂高茉莉>
楽器店店員。『このマンガがすごい!2016』、「このマンガがすごい!WEB」のアンケートに参加中。最近少女マンガのレビューのお仕事もちょこちょこと始めました。