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【日刊マンガガイド】『千代に八千代に』 大澄剛

2014/09/08


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『千代に八千代に』
大澄剛 双葉社 \600+税
(2014年8月28日発売)


国語、算数、理科、英語、家庭科……。教科をテーマにした連作短編集。
勉強はできないが素直で天然の千代さんと、彼女の元先生で、現彼氏の生まじめな国語教師。母親の再婚に反対する女子高生と、幼なじみの男子高生。駄菓子屋のお姉さんと少年、翻訳家のシングルファーザー……。さまざまな登場人物のエピソードが微妙にリンクしながら、パラレルに描かれてゆく。

「雨ってなんで痛くないの?」
「嘘つき めっちゃ痛いじゃん……」
「“アイ・ラブ・ユー”を夏目漱石は“月が綺麗ですね”って、二葉亭四迷は“死んでもいいわ”って訳したらしいんだけど……久美子ちゃんならなんて訳すかな?」
「長生きしてよ――かな」

なにげない日常をキラキラと輝かせる、些細だけれど劇的な発見。
目の前の世界が180度変わって見えるような、“学び”を通じて彼らが目にする、ワクワクするような新しい風景に、こちらも読みながらジーン。

第一章で「使わない言葉をそんなに憶えてどうするんですか? 私はこの先“咀嚼”なんて使わないと思うんです」「ならば歩み寄ろう 知識とは自分の世界を広げてくれるものだ 私が君の世界を広げる橋渡しになろう」といったやりとりを経て、知らない言葉をひとつ憶えるたび、先生のことが好きになっていった千代さん。最終章のラストで、結婚して生まれた2人の子供に、先生がやさしく語りかける言葉は――?

東野圭吾「ガリレオ」シリーズの湯川教授の「すべての事象には必ず理由がある」という言葉を、ふと思い出しちゃう。へ~、とボタンを押したくなる、トリビアも満載。
教科テーマという異色のスタイルも見事にハマった、ほっこり温かで味わい深イイ話満載です。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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