日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT』
『7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT』 第1巻
ハロルド作石 講談社 ¥602+税
(2017年4月6日発売)
『リア王』『ロミオとジュリエット』『ヴェニスの商人』『ハムレット』……だれもがその作品を知る劇作家ウィリアム・シェイクスピア。
考えてみれば400年以上前に書かれた作品でありながら、今でもこれほどまでに浸透しているとは驚くべきことだ。
これがひとつや2つではなく、ストーリーは子どもにも理解できるキャッチーなもので、かつ名台詞や名場面の宝庫で。
しかし、シェイクスピアが劇作家として身を立てるまでの経歴には謎が多いという。イギリスの片田舎の、手袋職人の家に生まれた無学な青年が、なぜ後世に残る傑作を続々と残すことができたのか!?
本作は、史実にオリジナルの仮説を加えながら“シェイクスピアの正体”を描く歴史ロマンだ。
青年、ウィリアム・シェイクスピアは塩商人の職を捨て、富と権力を求めてロンドンへと旅立つ。ランス・カーターと名乗り、3人の仲間をともなって――。
無二の親友で商才に長けたワース、家事を担当する気のいい従僕・ミル、そして中国人移民の美少女・リー。リーは人の運命を見通す不思議な力があり、また美しく力に満ちた言葉を紡ぐ詩の才能を備えている。
そう、タイトルが示すように……本作の軸となるのは“シェイクスピアはひとりではなかったのではないか!?”という大胆な仮説だ。
演劇が大衆の娯楽として人気となっているロンドンで、ランスはせっせと芝居小屋に通い、自分の脚本を売りこむがなかなかうまくいかない。
しかし、そんななかで、新たな出会いが彼を待つ!
ロンドンにやって来るまでのいきさつは、前日譚である『7人のシェイクスピア』(全6巻)に描かれているが、本作から読み始めてもまったく問題ナシ。
『BECK』や『RiN』といった若者の成長ストーリーを手がけたハロルド作石が、この“チーム”の物語をどのように紡いでいくのか楽しみでたまらない。近作では示唆に富む言葉にハッとさせられることが多く、成功を目指す者の人生観を描く迫力を感じるのだ。
もちろん著者一流のユーモラスな味もあり、歴史モノは敬遠しがちな方にもおすすめの作品である。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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