日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『レイリ』
『レイリ』 第3巻
岩明均(作)室井大資(画) 秋田書店 ¥600+税
(2017年4月7日発売)
織田信長が種子島により武田騎馬軍団を破った長篠の戦い。
ヒロインのレイリは、その戦いのあとに起こった落ち武者狩りのなかで家族を失い、武田家家臣・岡部丹波守に保護される。死に場所を求めるように剣の才能に目覚めた彼女は、武田家の現当主・勝頼の子である信勝の影武者を命じられることに……。
『寄生獣』『ヒストリエ』の岩明均(原作)、『ブラステッド』『秋津』の室井大資(作画)で送る戦国大河マンガも第3巻を迎え、いよいよ物語が本格的に動き出してきたようだ。
前半では、謎の襲撃者相手に、信勝の作戦と影武者・レイリの剣が冴える。
室井大資の描くアクションシーンは、原作者の岩明均のそれを思わせる、独特なテンポと“剣で斬られると人は死ぬ”という容赦ないリアリズムに支えられたものだ。
しかし、なんといっても見所は、覇王・信長がついにその姿を現す後半だろう。
武田家の高天神城を攻める徳川の裏に隠された、信長の狡猾な罠。戦っても負け、戦わなくても負け。
信長を敵にまわすことの恐ろしさに背筋が凍る。
レイリという少女の物語が、武田の最後という大きな歴史とついにつながった感のあるこの第3巻。 先が気になりすぎるので、ぜひとも、定期的なペースでの刊行をお願いしたいところである。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas