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『1122』 第1巻 渡辺ペコ 【日刊マンガガイド】

2017/05/23


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『1122』

  
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『1122』 第1巻
渡辺ペコ 講談社 ¥570+税
(2017年5月23日発売)


『にこたま』の渡辺ペコの最新連載。
フリーのWEBデザイナーの“いちこ”こと相原一子と、夫の“おとやん”こと相原二也。結婚7年目の30代子なし夫婦の結婚を軸に“結婚とは?”といったテーマが描かれてゆく。

冒頭、いちこの担当するサイトの結婚特集のアンケートを見ながら、
「呪詛とか不満とか侮蔑でイッパイの生活 地獄っぽくない?」と会話を交わす2人。
「自分でいうのもアレだけど わたしたちはたぶんけっこういい夫婦」というモノローグに、マンネリ気味にしても穏やかな生活を送る、仲よし夫婦の物語――と思いきや、なんと旦那には妻(いちこ)公認の恋人が!!

「夫で家族でズッ友で相棒で理解者でいちばん信頼してるひと なんでも話しあえるひと」だから、セックスも別にしなくてもいいし、恋愛も家に持ちこまなければOKと思っていたのに、いちこを気づかいながらも、恋に浮かれる様子を隠しきれない夫を見ていると「嫉妬じゃないからね」といいながらも、モヤモヤしている自分がいて……。

理性だけでは、わりきれない感情。
ルールからはみだしてゆく関係。
夫婦とひとくちにいえど、その有様は夫婦の数だけある訳で。
“不倫はダメ”といった正論も違うし、そもそも正解がないだけに、既婚者ならずとも読みながら、考えさせらずにいられない!

2人の関係について「キラキラルンルンの恋愛感情ではない ムンムンの欲情でもない 静かで広くて暗くてよく見えなくて でもそこにはいろんなものが含まれていて夜の海にも似ているような」と考える妻。
「でもその愛おしさは情欲興奮昂るといった類いとはほど遠く、慈しみ 庇護欲といった風情で限りなく沈静していた」と考える夫。

恋愛の季節をすぎた、夫婦という曖昧で不可解な関係性のなかにあるものを、今だかつてこれほど端的に言葉にしたマンガがあっただろうか?

なぜ彼・彼女たちが現在のように至ったのか、そのバックボーンとなる各々の家族関係や夫の恋人の夫婦関係(ってW不倫!)についてもきっちりと描かれていて、リアルなだけじゃない重厚な人間ドラマになっているのもいい。

第2巻以降、大きな波乱が巻き起こりそうな布石もあり、ドラマ版も放映中の『あなたのことはそれほど』に続き、賛否両輪を呼びそうな注目作だ。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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