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『狭い世界のアイデンティティー』 第1巻 押切蓮介 【日刊マンガガイド】

2017/05/30


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『狭い世界のアイデンティティー』

  
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『狭い世界のアイデンティティー』 第1巻
押切蓮介 講談社 ¥570+税
(2017年4月21日発売)


腐臭を放つマンガ業界に押切蓮介が宣戦布告!
物語は人気青年誌「グッドナイト」編集部に持ちこみをした青年が、豪壮なビルの上階から突き落とされ、惨殺される衝撃的なシーンから幕を開ける。

主人公の神藤マホはその青年の妹。復讐に燃えるマホは、正体を隠しながら新人漫画家として年間賞の佳作を受賞。グッドナイト編集部へと入りこみ、真相を追い始めるのだが、そこにはマンガ業界の深い闇が待ち受けていた——。

ざっと縦軸となるストーリーを紹介してはみたものの、これだけでは本作の魅力はいっさい伝わらない。キモとなるのは大胆不敵な“暴”の表現。
マホは短期スパンで漫画家としてのしあがるため、マンガ力のみならず、“暴”の力で物理的にライバルを蹴落としていくのである。
このド迫力のタッチで展開する業界内死闘の“圧”こそが、あまたの漫画家、編集者、読者、そして「このマンガがすごい!」のライターたちが日常的に感じているモヤモヤすらも放電させてくれるのだ。

大御所から中堅、ド新人に打ち切り作家、アシスタントまでが勢ぞろいする忘年会で繰り広げられる消耗戦、冒頭を読んだだけでネームをボツにする若い編集者、リツイートと「いいね!」とフォロワー数を心の寄りどころにして紙媒体の悪態をつくWEB漫画家軍団、全然マンガを描かないのに口だけは達者なアシスタントたち、SNSで業界批判ばかりをつぶやく老害作家……。
魑魅魍魎が巣食う凶悪な業界を、有無をいわさぬ“暴”の力で邁進するマホが、すがすがしい。

漫画家が大集結する不穏な交流会で突如開いた地獄の門。
死屍累々を乗り越えて、真の敵を八つ裂きにすることができるのか? 
マホの進撃から目が離せない。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。

単行本情報

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