日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『君死にたもうことなかれというなかれ』
『君死にたもうことなかれというなかれ』 第1巻
恩田澄子 講談社 ¥600+税
(2017年5月9日発売)
“死への憧れ”というのは中2病の典型ともいえる症状なわけだが、本作の主人公・山野蛍は筋金入り。
幼き日から、『ハムレット』のオフィーリアのように美しく死にたいと願い、そのために日々の鍛錬を欠かさず、磨きあげた美貌でもってモデルとしても活躍する日々。
そんな彼女が、“夢”を実現するために選んだのは、殺し屋にみずからの殺害を依頼すること。
“初仕事”としてとんでもない依頼者にぶち当たってしまった殺し屋の少女・スピカは、蛍からの無茶ぶりに振り回されることになるのであった。
間違った方向に才能を発揮したハイスペック女子に、“究極の美”だの“企画”だの“プラン”だのを翻弄される新米暗殺者の姿はたいへん楽しいのだが、それとともに、“死に魅せられた少女”と“死を職業にした少女”という孤独を抱えた少女同士の友情の物語でもある。
“美しく死ぬ”ためだけに、本職の殺し屋をドン引きさせる勢いで暴走する、蛍の変人っぷりで大笑いさせつつ、その合間に、等身大の女の子の繊細な感情を挟みこんでゆく、たいへん、心憎いマンガである。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas