日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『美人が婚活してみたら』
『美人が婚活してみたら』
とあるアラ子 小学館クリエイティブ ¥1,000+税
(2017年5月11日発売)
中央線サブカルチャーシーン&SNSを舞台に繰り広げられる、とある女の子の自己認証をめぐる葛藤を描いた『わたしはあの子と絶対ちがうの』が大きな注目を集めた、とあるアラ子の最新刊。
仕事にも容姿にも恵まれていたタカコは、若い頃から不倫を繰り返したすえに燃え尽き症候群に。
今の自分に必要なのは「好きな人との落ちついた結婚生活だ」と気づき、自分を変えるため、経済的安定をえるため、一念奮起して婚活サイトに登録するのだが――。
女という者は“美人”に生まれただけで“勝ち組”と思われがちだが、本作のタカコは天然でズボラで不器用がゆえに、美という“武器”を生かせないままイイ年になってしまった、いわゆる“負け美女”。
それだけに、しょっぱなから会った相手に美人局に間違えられたり、残念エピソードのオンパレード!
本作自体、アラ子氏が地元の友人・タカコの婚活バナシを現在進行形でマンガに描いた“実録もの”だけに、登場人物のキャラクターも言動もリアルすぎて爆笑しつつも、がぜんタカコさんを応援したくなる!
婚活市場においては“若さ=生殖能力”が最大限のウリであり、アラサー女子が必死で磨いてきた“美しさ”や“センス”や“キャリア”はむしろ敬遠ポイントでしかないとか、女子は結婚や子どもの有無で分断されがちだとか。
“婚活”を通してかいま見える現代のジェンダーの諸問題を、あくまでヘタウマタッチのゆる~いコメディのなかでサラッと浮き彫りにしてみせるバランスも絶妙。
本作の続きとなるタカコさんの婚活放浪のゆくえは、無料マンガアプリ「Vコミ」にて現在進行形で連載中。
気になる人は、こちらもぜひ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69