日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ウルヴァリン:オールドマン・ローガン』
『ウルヴァリン:オールドマン・ローガン』
マーク・ミラー(著) スティーブ・マクニーブン(画) 秋友克也(訳)
ヴィレッジブックス ¥2,980+税
(2017年5月12日発売)
現在上映中の映画『ローガン』の原案となった本作。
マッドマックス的な、無法国家の集合と成り果てたアメリカを舞台に、大陸の西端から東端へと、なぜかスパイダーモービルで走破する。
主人公は老いさらばえ、とある理由で「人を殺さない」と誓い、ウルヴァリンという名前すらも封印したローガン。
「とにかく平和に暮らしたい」とただ願うローガン爺さんのもとへ、視力を失ったホークアイがやってきて危険な旅が始まる。
元X-MENと元アベンジャーズ。
それも、どちらも武闘派というジジイ2人の旅。
2人とも本来の潜在力は高いのに、かつてヴィラン連合に惨敗したという苦すぎる過去を背負っている。
世界も、自らの肉体も、老いてしまった。心に悲しみの真っ黒な影を抱えながら。
でも怒りのエネルギーもまた爆発しそうなくらい煮えたぎっている……。
『キック・アス』シリーズで生々しい暴力を炸裂させ、『スーパーマン:レッド・サン』ではスーパーマンがアメリカと敵対するパラレルワールドを描き、流血と爆炎と陰謀が結晶化したような『ネメシス』や『ウォンテッド』といった珠玉の良作を生み出してきた原作者マーク・ミラーがまたしてもやってくれた。
ジジイと、疑心暗鬼と、殴り殴られの流血沙汰が大好きで、日常的に苦渋を舐めてる実感のある人ならきっと気にいるはず。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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