365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月21日は村岡花子の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『虹の谷のアン』 上巻
原ちえこ(画) ルーシー・モード・モンゴメリ(作)村岡花子(訳)
講談社 ¥650+税
1893年(明治26年)の今日6月21日、翻訳家・児童文学者である村岡花子が誕生した。
2014年の朝ドラ「花子とアン」で広く知られるようになった彼女。
数々の翻訳作品があるが、代表作はなんといっても「赤毛のアン」シリーズ。
『赤毛のアン』から第10作目の『アンの娘リラ』に至るまで、主人公・アンの成長を愛情込めて翻訳しており、その名訳はいまだ衰えぬ人気を誇っている。
さて今日は、村岡花子の翻訳したアンシリーズのなかで第7作目にあたる『虹の谷のアン』のコミカライズをご紹介したい。
この作品でのアン・ブライスは40歳すぎ。医師であるギルバートの妻として6人の子どもたちに囲まれ、プリンス・エドワード島で暮らしている。
子どもたちは、彼らの最高の遊び場である「虹の谷」をどこよりも愛している。
ある日彼らはそこで、最近町に越してきたメレディス牧師の4人の子どもたちと出会う。
彼らはみるみるうちに打ち解けて、新しい仲間となり、毎日を楽しく過ごすようになる。
そこへふらりと現れた少女・メアリ。
どうやら不幸な暮らしをしているらしいメアリを、彼らは全員でかくまおうとするが――。
この作品で主に活躍するのはアンではなく彼女の子どもたちだ。
彼らは故郷を愛し、そこにある自然を愛する。母であるアンが昔、りんごの並木道に「歓喜の白路」と名づけて愛でたように。
アン自身はすっかりよき母親となり、子どもたちを見守る立場になっている。
コミカライズとしては、やはり絵の魅力に尽きるだろう。
著者は美しいカナダの自然や当時の風俗を、独特の優しいタッチで丁寧に描き出している。
さらにたくさんの登場人物たちの描きわけも見事。個性がそれぞれにはっきりとしているので、物語の理解を助けてくれる。
文学作品への距離を一気に縮めてくれる、名作のコミカライズとはじつにありがたいもの。
加えて、村岡花子の名訳を使用しているとなればなおさらだ。
今日の記念に、ぜひページをめくってみてください。あなたを瞬時にプリンス・エドワード島に連れていってくれるはずだから。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」