日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ハミングバード・ベイビーズ』
『ハミングバード・ベイビーズ』 第1巻
久住昌之(作) 朔田浩美(画) 集英社 ¥600+税
(2017年5月19日発売)
ご存じ『孤独のグルメ』の久住昌之の最新原作コミック――といえば、マンガファンならずとも気になるわけだが、今回は意表をついた「音楽×グルメ」もの。
「もううそつくのはイヤ」人生うまくいかないギター上手な美女OL・平。
ボンバーヘアがトレードマークのドラマーガール・ヨネ。
とあるライブで偶然に出会い、意気投合した2人のバンドストーリー。
表紙だけ見るとふわっとした乙女チックなものを想像するが、なかなかどうしてロックな疾走感でぐいぐい読ませるし、なかなかマンガで描くのは難しいような音楽がぱっと鳴った瞬間のセンス・オブ・ワンダーもしっかりと描写されていて、食べものネタはむしろ不要かも……とすら思ってしまうが、やっぱり女子の友情においしい食べものは不可欠!
演奏の前後に毎回、2人が様々な店で杯を交わすのだが、その飲み食いっぷりがまた惚れぼれするほど豪快で気持ちよくって、見ているだけでこちらまでワクワク。
近年、音楽と食のコラボはフェスやイベントでもおなじみだが、やっぱりフィジカルな快楽や掛けあいの妙味の追求という意味では音楽と食は通じるものがあるってこと?
お嬢様ギタリストとビンボー&ボーイッシュなドラマーガールというコンビ設定も、『NANA』を彷彿させる好対照で、2人のテンポいい会話の掛けあいも楽しい。
音楽ファンならずとも追っかけたくなる、ガールズ遅春ロードムーヴィーだ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69