日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『官能先生』
『官能先生』 第1巻
吉田基已 講談社 ¥900+税
(2017年6月23日発売)
出版社につとめる傍ら、売れない純文学作家をしている冴えない40男・六朗は、夏祭りの日に出会った22歳の少女・雪乃に恋をする。
そんな折、六朗のもとに官能小説を執筆せよとの依頼が舞いこんでくる。
最初は抵抗していた六朗だったが、やがて雪乃へのあふれる情念を原稿用紙へとたたきつけ始めるのであった。
というわけで、『恋風』や『夏の前日』で知られる吉田基巳の新作は40代のオジサンが20代の美少女にひと目惚れしてオナニーしたり、オナニーしながら彼女を主人公に官能小説を書いたりする作品である。
普通、冴えないオジサンの恋とオナニー模様なんて読めたものではないはずなのだが、六朗の冴えないながらも木訥(ぼくとつ)でまじめで善良な人柄、そして文学への真剣な態度などが組みあわさって、不思議と愛おしく思えてしまう。
ヒロイン・雪乃の20代とは思えぬエロスも最高であり、そりゃあ不惑のオジサンが惑って官能小説を書き始めるのも無理はない。
エロスを描く官能小説に対して、官能小説を書くことのエロスを描いたマンガが本作である。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas