『夏の前日』第5巻
吉田基已 講談社 \648+税
(2014年8月7日発売)

芸術大学油絵専攻の4年生、青木哲生の長い夏がいよいよ終幕を迎える最終巻。

画廊に勤める年上の和服美女・晶は、哲生の絵を評価し、何くれとなく世話を焼いてくれ……普通に考えればこれ以上はないという恋人（しかもエロいボディの床上手！）。

なぜその幸せに身をとどめていられないのか、やきもきさせられてしかたない読者は多かったであろう。その部分も含め、哲生がこれからの道を見定めていこうとし、自分の本当の望みに直面するなかで結論が引き出されていく。

周囲から絵の才能を認められつつも、どこか自信を持てなかった哲生。不器用で人づきあいもへたくそだった彼が晶との交わりによって、自分に素直になることを知ったのは間違いない。

引き締まった表情でキャンバスに向かい、晶の姿を描く哲生の横顔に、彼女からもらったこと……そのすべてが表れている。

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」