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『ゆきにょ書きます!』 第1巻 てりてりお 【日刊マンガガイド】

2017/07/27


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ゆきにょ書きます!』



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『ゆきにょ書きます!』 第1巻
てりてりお 白泉社 ¥600+税
(2017年6月29日発売)


三島雪乃。ペンネームは春風ペコリ。超絶売れっ子の作家だ。
でも、じつは彼女ひと文字も書いていない。
書いているのは、幼なじみのゴーストライターだ。

天才少年作家・阿久太と、作家を演じる女性・雪乃のドタバタコメディ。
阿久太は執筆スピードが異常に早いのみならず、編集が意見をいう余地のない完璧な作品をしあげる天才。
幼い時から雪乃を姉のように慕う彼は、雪乃に読んでもらいたい、という思いだけで小説を書いた。プロとして売れたいとはまったく考えていなかった。
一方で雪乃は、彼の才能を知ってしまって以来、デビューさせないわけにいかない、と感じていた。
原稿を勝手に投稿したところ、それを知った阿久太が雪乃名義にしてしまったので、今も2人は嘘をつき続けている……という事情だ。
普段は家事全般と打ちあわせすべてを雪乃がこなしており、わりとWIN―WIN。
ゴーストライターものだが、2人の間には売名や金銭などの汚れた利害関係がまったくない。

ここまで売れて、両者OKしているのなら、「外側」がどっちでも原稿があがりさえすればいいんじゃ……という気がするくらいに、ほのぼのした作品。
2人の生活に焦点が当たっている第1巻時点では、バレてまずいことになりそうな綱渡り感はない。

おもしろいのは、春風ペコリ作品はデジタル化などの売るための努力の必要がいっさい必要ない、ブランド力が高い作品として流通していることだ。村上春樹作品のようなものだろうか。
小説家を題材にしたマンガはいろいろあるが、エンタメやラノベではなく、かといってミステリ、SF、純文学ともちょっと違う、何にも左右されないタイプの作家を描くマンガは珍しい。

雪乃との関係や、「ポストペコリ」と呼ばれる作家との絡みで、新しい体験が増え始めている阿久太。彼のマイペースな作風が、今後も変わらないのか、それとも路線が揺れていくのかは、かなり気になる。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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