日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『サルまん 2.0』
『サルまん 2.0』
相原コージ/竹熊健太郎 小学館 ¥1,500+税
(2017年6月26日発売)
表紙を飾るは懐かしの“ちんぴょろすぽーん。”。「サルまん」幻の続編が奇跡の単行本化!
通称「サルまん」、『サルでも描けるまんが教室』は1989年から連載された異色のマンガ入門だ。
『ぎゃぐまげどん』『文化人類ぎゃぐ』『コージ苑』などシュールで実験的なギャグマンガで注目を浴びた相原コージと、当時はまだ若手の編集者・ライターであった竹熊健太郎のタッグによる “マンガ入門”パロディ。
作中の相原と竹熊はやがて『とんち番長』なる大ヒット作を生み出すが、その後の凋落までも描いた壮大な漫画家物語となった本作は、いうなれば「こんな『まんが道』はイヤだ!」!?
さて、時は流れて21世紀、マンガをめぐる環境もかなり変化した。
2007年、注目を浴びて連載開始した続編『サルまん2.0』だが、なんと連載8回目にして中断。
その理由はインターネットとの連動を強く意識した竹熊の企画方針に、相原がノレなかったためであり……当時の2人の不完全燃焼な想いも最終話にはバッチリ描かれている。
著者たちが作中で破綻を明言しただけに、10年を経ての単行本化は驚きだった!
本作には著者、編集者たちによる『サルまん2.0』反省座談会も大ボリュームで収録。
読み切り作品『サルまん21』や、元祖「サルまん」関連の企画記事などのお宝ページも満載。
今やストーリーマンガも手がける相原、WEB雑誌「電脳マヴォ」で新しい才能の開拓にいそしむ竹熊……2人の現在にも想いを馳せればさらに感慨深いものがある。
著者が自ら打ち切った本作から、あなたは何を読みとるか。
そう、失敗は成功の母である!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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